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リクルート出身者は、なぜ外資SaaSで苦労するのか ── 「課題を与えられる営業」から「課題を啓蒙する営業」へ

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    全体公開

    トミオやで!

    最近Xで、「リクルートからSaaS企業に転職したら、全く売れなくなってしまって……」という話がちょっと話題になっとった。ワイもそれを見て、思わずこう書いた。

    リクルートのソリューションて基本的に「解きにいく課題」が明確なんですよね(「求人」とか「集客」とか)。だからKGIからKPI分解してアクティビティ叩き込める人なら結果の再現性を得やすい。一方SaaS(特に外資が売ってるやつ)は課題そのものを売り込み認知作りから始めないと売れない。そこで躓く。

    ── トミオ(@tomyuo)のポスト

    これな、うちの面談でもホンマによう出てくる話や。今日はこの140字の裏側を、ちゃんと掘っとこうと思う。

    このAcademyの運営元は、外資IT特化の人材エージェント・チャレンジャーベースや。ワイはその学長として書いとる。そんで、エージェントとして毎日リクルート出身のチャレンジャーと話しとる立場から言うで。

    結論から言うな。リクルート出身者が外資SaaSで苦労するのは、実力が足りんからやない。「解きにいく課題」の性質が、入社した瞬間にガラッと変わるからや。

    Xでは「SaaS」と書いたけど、ワイが言いたいのは、外資のエンタープライズソフトウェアやビジネスアプリケーションを売る営業全般の話や。この記事では「外資IT」と呼ぶ。

    まず前提。リクルート出身者は「いける」と判断されとる

    先にこれを言うとかんとフェアやない。

    外資ITの営業職は、普通はソフトウェアを売ったことのない人をいきなりAE(アカウントエグゼクティブ=商談を持つ営業)では採らへん。営業経験があっても、や。ソフトウェア営業が未経験なら、SDR/BDRから入って、そこからAEに上がるのが王道や(この構造はこっちの記事で解説しとる)。

    そんな中で、ソフトウェア営業未経験でも、いきなりAEで採用されることのある数少ない代表格の2社がある。リクルートと、キーエンスや。

    つまり外資IT側は「この2社の営業出身者は、AEとして立ち上がるポテンシャルがある」と判断しとるわけや。実際、無形商材の法人営業で、量と型を回して数字を作ってきた人材やからな。メーカーのルート営業から「いきなりAE」は、まずない。ここに差がある。

    ほんで、リクルートの中でも扱っとった商材や顧客層によっては、外資ITにそのまま直で乗れる人も普通におる。「リクルート出身者は苦労する」は一律の話やない。 ここは最初に置いとく。

    そのうえで、や。入社後の立ち上がりで苦労する人の割合が、ワイの体感では明らかに多い。 苦労するからといって生き残れへんわけやなく、そこを越えてしっかり成果を出しとる人も何人もおる。ただ、大変は大変や。

    なんでか。ここからが本題や。

    課題を「与えられる」営業と、課題を「啓蒙する」営業

    課題を与えられる営業と、課題を啓蒙する営業の対比図

    リクルートが売っとるソリューションは、基本的に「解きにいく課題」が最初から明確や。「人を採りたい」「客を集めたい」。顧客企業の側で、課題がもう定義されて、自分の言葉で言える状態になっとる。予算の在処もだいたい決まっとる。人事、店長、オーナー。誰に会えばええかも分かっとる。

    課題が与えられとるから、営業の仕事は「その課題を、うちの商材でどう解くか」に集中できる。KGIからKPIに分解して、アクティビティを叩き込む。訪問数、提案数、受注率。この型を回し切れる人は、結果の再現性を得やすい。 リクルートの営業が強いと言われる理由は、この「量×型×PDCA」の徹底や。ワイもそこは心底リスペクトしとる。

    一方で、外資ITはどうか。

    多くの外資ITの商材は、顧客から見ると「なくても今日は困らんもの」や。しかもコンセプト自体が新しいことが多い。課題は顧客企業の中にあるんやけど、まだ定義されとらん。言葉になっとらん。検討する部署が決まっとらん。予算がどこから出るかも決まっとらん。

    ここで大事なんは、課題は営業が作るもんやない、ということや。課題は、お客さんの中にもうある。ただ、お客さん自身がまだ気づいてない。 営業がやるのは、「御社の課題はこれやないですか」と仮説を当てにいって、「たしかにそれが課題や」という認識と合意をお客さんの中に作ることや。ワイはこれを「課題啓蒙」と呼んどる。この啓蒙ができて初めて、製品の話に入れる。

    ワイがTableauの日本1人目の営業やった頃が、まさにこれやった。当時Tableauなんて誰も知らん。「ビジュアルディスカバリー」というコンセプト自体、お客さんは聞いたこともない。「Excel使ってて、別に困ってません」と普通に言われる。その先にどんな世界があるかを知らんのやから、当たり前や。誰も知らんコンセプトの製品を日本市場に持ち込むときは、課題を啓蒙する売り方しかない。それ以外に道がなかった。

    ここで「正しい顧客に売りにいってない」「なぜ貴社が選ぶべきなのかを訴求できてない」という現象が起きる。課題が与えられとるなら、誰に売るべきかは自明や。課題を啓蒙する営業では、「誰が困っとるはずか」を自分で仮説を立てて決めなあかん。訪問数を増やしても、仮説がなければ刺さらへん。「なぜ御社が」の答えも、顧客の課題を自分で言語化できて初めて出てくる。

    KGI→KPI→アクティビティの型は、課題が定義済みの世界では最強の武器や。課題が未定義の世界では、その型の「一段上」に、課題を啓蒙する工程が要る。 リクルート出身者が躓くのは、まさにこの一段や。

    「無形商材の法人営業やってました」の”いける”がズレる

    ここが一番言いにくいところやけど、事実やから書く。

    リクルート出身者は面接でこう言う。「無形商材の法人営業をやってきました。だから外資ITもいけます」。

    これ、嘘やない。ホンマにやってきとる。ただ、その”いける”の中身がズレとることが多い。

    本人が思っとる”いける”は、「顧客に会って、課題を聞いて、提案して、クロージングできる」や。それは正しい。ただ、外資ITで求められとるのは、その手前の「顧客がまだ気づいてない課題に、仮説を当てて気づいてもらう」ことや。ここは今までやってきてない。やってきてないのに「同じ法人営業や」と思って入る。ギャップに気づくのは、入社してからや。

    これは能力の話やない。「自分ができること」の輪郭が、前職の構造に沿って描かれとるというだけの話や。誰でもそうなる。むしろリクルートで成果を出してきた人ほど、「営業とはこういうもんや」という型が身体に入っとる。成功した型やからこそ、外資ITに来て最初の数ヶ月「なんで自分のやり方が通用せんのや」となりやすい。型が強い人ほど、この段差は大きく感じる。

    大事なんは、このズレに入社前に気づいとるかどうかや。気づいて入る人と、気づかんで入る人で、最初の半年が全然違う。

    典型例:「エンタープライズやってました」の中身のズレ

    分かりやすい例をひとつだけ挙げるとな。

    リクルートで「エンタープライズセールスをやってました」という人がおる。これも事実や。大企業を担当して、数字を作ってきとる。

    ただ、その中身は多くの場合、大企業の特定の部門(たとえば人事)に対して、「求人」という形でもう落ちてきとる需要を当てにいく仕事や。相手も、課題も、商材も、決まっとる。その中で大きく取るのが仕事や。

    一方で外資が「エンタープライズセールス」と言うとき、頭の中にあるのは別物や。経営課題そのものを見つけて、複数の部門を跨いで、まだ存在しとらんプロジェクトを立ち上げて、その中に自社製品を位置づける仕事や。

    同じ看板で、中身が別物なんよ。

    面接官の頭にあるのは後者や。せやから「エンタープライズやってました」と言うたときに、面接官が想像しとる仕事と、本人がやってきた仕事の間にズレが生まれる。このズレに気づかんまま入ると、立ち上がりで一番苦しむ。ワイの面談で、これは何度も見てきた。

    繰り返すけど、これは「一部にそういう例がある」という話や。SMB向けをやっとった人にも、同じ形のズレはある。中小の店舗に集客商材を当てにいく営業と、まだ課題やと思われとらんものを買うてもらう営業は、別物や。エンプラの例は、それが一番くっきり見えるというだけや。

    そんで、これも言うとく。大企業の人事部門に食い込んで、稟議を回して、複数の関係者を動かして数字を作ってきた経験は、本物の資産や。 外資ITで足りんのは、その上のレイヤー、「課題を啓蒙する」ところだけや。ゼロからやり直しやない。一段足すだけや。

    佐藤亮『エンタープライズセールス』を読むと、この壁の正体が分かる

    この「一段」を、一番体系的に書いてくれとる本がある。セールスフォース関西支社長・佐藤亮さんの『エンタープライズセールス』(翔泳社)や。うちの課題図書として、前に別記事でがっつりレビューした

    この本の第1章のタイトルが、まさにこれや。「エンタープライズ企業に従来の『絞り込み型』セールスが有効でない理由」。

    「絞り込み型」というのは、リード(見込み客)を集めて、ファネルで絞り込んで、確度の高いところをクロージングする、ザ・モデル型の営業や。課題が明確で、顧客の数が多い市場では、この型が最も効率がええ。リクルートの営業は、構造的にはこの絞り込み型に近い。

    対して佐藤さんは、大企業向けは「拡散型」やと言う。一つのアカウントの中で、部門を跨いで、課題を見つけて広げていく。その中核にある手法が「プロジェクトセリング」=顧客のビジネス成果に紐づくプロジェクトを、営業が企画して実行を支援する。製品を売るんやなくて、プロジェクトを売る。

    この「絞り込み型」から「拡散型」への転換が、そのまま、リクルート出身者が外資ITで越える壁の正体や。 本を読めば、自分がどこで躓いとるかが言語化できる。言語化できたら、直せる。

    外資ITの中でも、この比重は一様やない

    「外資IT」と一括りに言うたけど、この「課題を啓蒙する」比重は、売るもの・売り方でだいぶ変わる。ここはワイの見立てとして聞いてくれ。

    BIツールみたいな単体ソリューションでも、この工程は入る。既存ツールからの置き換えなら課題は比較的はっきりしとるけど、新規で入れる場合は「見える化して、何が嬉しいん?」から啓蒙せなあかん。単体プロダクトやからといって、課題が向こうから落ちてくるわけやない。

    Salesforceを代表例にすると、CRM(顧客管理)という言葉は誰でも知っとるのに、「なんで今のやり方やとあかんのか」を顧客自身が言えてないことが多い。そこを営業が定義せんと商談にならん。

    ほんで、大企業を担当するアカウント営業になると、これがもっと違う。複数部門×長期×プロジェクト。課題を一つ啓蒙するどころか、いくつも見つけて束ねて、プロジェクトに仕立てる。佐藤さんの本が正面から扱っとるのはここや。

    せやから、リクルートから外資ITに移るときは、自分が入るポジションで「課題を啓蒙する」比重がどれくらいかを先に見とくとええ。同じ「AE」でも、求められる「一段」の高さは違う。

    ほな、どうしたらええか

    武器はそのままでええ。量、型、PDCA、関係者を巻き込む力。これは外資ITでも、そのまま強い。むしろ、それを持っとらんで課題だけ語れる人より、よっぽど強い。

    足すのは「課題を啓蒙する」技術、これ一つや。

    具体的には、

    • 入社前に、ズレの正体を言語化しとく。 この記事がそれや。「自分は課題を与えられる営業をやってきた。これから課題を啓蒙する営業に移る」と、自分の言葉で言えるようにしとく。それだけで面接での話し方も変わるし、入社後の半年の過ごし方も変わる。
    • 課題図書を2冊読む。 『エンタープライズセールス』と『チャレンジャー・セールス・モデル』や。前者は「拡散型」と「プロジェクトセリング」、後者は「顧客に教える営業」。どっちも「課題を啓蒙する」側の営業の教科書や(外資IT営業を学ぶ3冊の記事も見てや)。
    • 「課題を啓蒙する」練習を、入社前からやる。 うちで「課題啓蒙型営業への変革」というコースをやっとるのは、まさにここのためや。

    最後にもう一回言う。リクルート出身者は、外資ITから「いける」と判断されとる側の人間や。 ポテンシャルがあるから、いきなりAEで採られる。そのポテンシャルを、入社後の最初の半年で「一段」足して現実にするか、ズレに気づかんまま消耗するか。分かれ目はそこや。

    自分がいまリクルートにおって外資ITを考えとる、あるいはもう移って立ち上がりで苦戦しとる。どっちでもええ。「自分の場合、この一段はどこにあるんやろ」と思ったら、ワイに相談してくれ。うちの運営元のエージェント面談に繋ぐで。

    そんじゃな!

    トミオに相談する


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