【2026年版】外資ITレイオフ対応マニュアル ── 告げられた日から、退職合意書にサインするまで
INDEX
トミオやで。
上司と HR から、急に30分の Zoom が入った。件名は空か、”Quick sync” か、”Catch up”。心当たりは、なくはない。他の国でレイオフがあったというニュースは、先月あたりに見た。
面談で言われたのは、「あなたのポジションは無くなります」。その日のうちに、1通の書類が電子署名で届いた。退職合意書や(英語なら Separation Agreement)。最後に「●日までにサインを」と書いてある。
いま、頭の中はたぶんこうや。これにサインするしかないんか。断ったらどうなるんか。この金額は、多いんか、少ないんか。
先に、答えを一つだけ言う。
サインは、まだや。
退職合意書は、中身をひと言で言うと「この条件で、自分の意思で辞めることに合意します」という書類や。キミがサインせん限り、話は決まらん。そして日本では、会社が社員を一方的に辞めさせるのは難しい。だから会社は、キミのサインが欲しい。つまり、日本では、会社よりキミのほうが強い。サインするまで、決めるのはキミや。 なんでそう言えるのかは、この先で順に書く。
長い記事や。先に、要点を7つにまとめておく。これだけ頭に入れて、あとは必要なところから読んでくれ。
- まだサインするな。 退職合意書は、キミがサインするまで何も決まらん。面談では「持ち帰ります」でええ。聞くのは「いつまでに返事か」「過ぎたらどうなるか」の2つだけ
- 日本では、会社は社員を簡単には辞めさせられん。 辞めさせるには、ちゃんとした理由と手順を会社の側が示さなあかん。それができん会社は、条件を上げてでも「合意して辞めてもらう」しかない。ここが、条件の交渉ができる理由や
- 「辞めません」が、一番強いカードや。ただし、突っぱねるんやない。 「この会社で続けたい気持ちはある」と伝えた上で、「提示の内容については、話を聞かせてほしい」と交渉の席に着く。続けたい意向が、会社を動かす
- 「会社都合」か「自己都合」かで、失業給付が変わる。入口は「当然、会社都合ですよね」の姿勢や。 それでも会社が「自己都合」の形にこだわるなら、それはカードになる。給付の差を分かった上で、自己都合の形を飲む代わりに、退職金か在籍の終わる日を上げてもらう。差を知らんまま飲むのが、一番損
- 最初の1週間は、決めずに確かめる。 これは解雇なのか、合意で辞めてくれという話なのか。退職金は何か月分で、何を基準にした月数か。いつまで在籍できるか。有給と RSU とコミッションはどうなるか。条件を決めるのは誰か
- 最初のメールに、頼みは書かん。 書くのは、この会社への気持ちと、これまでの貢献。だから残念やということ。そして「まず気持ちの整理が要るので、順番に進めさせてほしい」ということ。頼みは、会社の返事を見て、自分の線を引いてから、1つか2つに絞って出す。本線は、退職金を上げるか、在籍の終わる日を延ばすか。書き方は会員向けの節に置いた
- 読めん条項があったら、サインの前に弁護士か社労士へ。 迷ったら、ワイに連絡してくれ
この記事で扱うのは、告げられた日から、退職合意書にサインするまでや。前半は誰でも読める。なぜキミのほうが強いのか、会社都合と自己都合で何が変わるか、最初の1週間でやること、交渉の考え方。後半はアカデミーの会員向けで、交渉の設計(会社とキミの状況の書き出し・4つの線)、HR とのメール(1通目から締めまで)、退職合意書の読み方を置いてある。サインした後の手続き(退職金の税金・健康保険と年金・雇用保険の申請)は、別の記事で書く。
まだ告げられてはおらんけど、周りで続いとって身構えとるキミは、末尾の「まだ告げられとらんキミへ」も読んでくれ。
法律では強い。せやけど、経験では弱い
日本では、法律の上でキミのほうが強い。それは次の節で、条文と国の文書を当てて書く。それでも、ワイが相談で見た範囲では、最初の提示のままサインした人が少なくない。強いはずの側が、なんで負けるんか。
力関係が、2層になっとるからや。

一つ目の層は、法律。ここはキミが強い。二つ目の層は、経験と情報と時間。それに、動揺や。仕事が無くなるという動揺は、初めてのレイオフなら誰にでも来る。会社は動揺しとらん。キミは動揺しとる。これも力の差や。そして、サインの場で効いてくるのは、二つ目の層のほうや。
キミの側から見る。レイオフの交渉は、マイホームの購入に似とる。ほとんどの人にとって一生に一度か二度で、相場が分からんまま、本番がいきなり来る。転職なら人生で何回かやる人もおるけど、レイオフを何回も経験する人はそうそうおらん。しかも一人で、期限を切られる側におる。動揺が収まる前に、期限が来る。
会社の側から見る。会社はレイオフを何度もやっとる。本社には型があって、HR と弁護士が付いとって、期限を切るのは会社のほうや。そのうえ、会社にとってレイオフの条件交渉は、継続の取引やない。一回きりで終わる相手に、できるだけ安く、できるだけ早く、できるだけ静かにサインしてもらうのが会社の最適解になる。悪意があるわけやない。構造がそうなっとる。
法律の層は、変えられんし、変える必要もない。変えられるのは、経験と情報の層や。だから、この記事を書く。トミオのところには、レイオフを告げられたアカデミー生からの相談が届く。相談に来たチャレンジャーと一緒に筋道を考えて、最初の提示より良い条件で着地した例が、だんだん溜まってきた。そこで見えてきた型を、これから外資ITで働くチャレンジャーに向けて公開する。情報ギャップを埋めるのが、このアカデミーの仕事やからな。
それと、会社の側には HR と弁護士が付いとる。キミの側にも、誰かがおってええ。レイオフの相談には、ワイもずいぶん乗ってきた。この記事を読んでも決めきれんとき、困ったときは、一人で抱えんと連絡してくれ(トミオに相談する)。
学長トミオ
この記事の法律の話は、厚生労働省のページと条文、国が公表しとる裁判例の要約を典拠にして書いとる。裁判例は、国の要約の範囲で紹介するだけで、キミのケースへの当てはめやない。キミの状況に当てはめる判断は、弁護士か社労士に聞いてな。
レイオフは、こう来る
前兆は、ほぼ無い
相談に来たチャレンジャーが口を揃えて言うのが「驚きました」や。「自分が対象になると思ってました」と言う人は、いなくはないが少ない。
営業として成績が良いか悪いかも、思っとるほど関係ない。良い数字を出しとったのに対象になった例もある。「他の国でレイオフがあった」「業績が最近いまひとつ」という材料はあっても、多くの人にとっては「まさか自分が」という形でやって来る。それを知っておくだけで、面談の場で頭が真っ白になる時間が少し短くなる。
合図は、上司と HR の急な面談
合図は決まっとる。直属の上司と HR(人事)の2人が同席する、急なミーティングや。
その場で「組織の再編により、あなたのポジションは今後無くなります」と告げられる。退職金の額、最終出社日、回答の期限がその場で口頭で伝えられて、「書類は別途送ります」で終わる。冒頭の退職合意書は、このあと電子署名のツールで届く。
決まり文句には、型がある
言い方には型がある。
- 市場環境の変化:「最近の市場環境の変化により、運営の規模を見直す必要があります」
- 組織の再編:「組織の再編を進めており、残念ながらあなたのポジションは不要になります」
- 投資の優先順位:「投資の優先順位を見直し、リソースをより効率的に配分することを決定しました」
- 効率化:「事業の効率化の過程で、いくつかのポジションを削除することになりました」
全部に共通しとるのは、「これはもう決まったことで、キミに選択の余地は無い」という印象を作る言い方やということや。
この「もう決まったこと」という空気は、本社のやり方を日本にそのまま持ち込んだものや。実例を一つ。Amazon は2025年10月に、コーポレート部門で約1万4,000のロールを削減すると社員向けの書簡で公表した。対象の多くの社員に社内で次の職を探す期間を90日与え、見つからなければ退職金や再就職支援などの移行支援を行う、と書いてあって、その90日にこう添えてある。「時期は、現地の法律によって多少異なる」(ワイの訳。原文は “the timing will vary some based on local laws”。出典:Amazon “An update from SVP Beth Galetti on Amazon workforce reduction”)。Microsoft も2025年にレイオフを行い、CEO が社員向けの書簡で触れとる(出典:Microsoft “Recommitting to our why, what, and how”)。
90日とか、60日とか、「この日までに」とか。本社の段取りは、本社の国の法律を前提に組まれとる。日本法人の社員に同じ段取りをそのまま当てられるかというと、話が違う。次の節がこの記事の芯や。
「レイオフ」と言わずに来ることもある ── PIP
もう一つの入口を書いておく。外資ITでは、「レイオフ」という言葉を使わずに、PIP(Performance Improvement Plan=業績改善計画)の形で来ることがある。
PIP そのものは、成績の振るわん社員に目標と期限を示して改善を求める、評価の仕組みや。それ自体は退職の話やない。せやけど、PIP の提示とセットで「PIP を受けるか、いまの条件で合意退職するか、選んでください」と言われる型がある。これは、入口の言葉が違うだけで、この記事で扱う話と構造は同じや。会社が欲しいのは、キミのサインや。
PIP を受けるのも、キミの正当な選択肢や。目標が現実的か、期間が妥当か、評価が公正かは、まず PIP の書類で確かめる。PIP の記録は、その後の手続きの材料にもなる。受けるなら真面目に取り組んで、目標と評価の記録を自分でも残しておく。合意退職を選ぶなら、この先の交渉の話がそのまま使える。どちらにせよ、その場で決めんでええ。
なぜ日本では、会社よりキミのほうが強いのか

順番に行く。4段ある。
① 会社は、キミを簡単には解雇できない
先に結論を言う。会社の都合で人を減らす解雇(整理解雇)は、日本では、理由と手順を揃えんと認められん。 揃えるのは簡単やない。やろうとしたら、理由を揃えて、手順を踏んで、争われたら裁判や。面倒やし、金もかかる。金で解決できるなら、そのほうがええ。会社は、そう思っとる。キミの前に条件の話が出てくるのは、これが理由や。
根拠を3つだけ置く。法律の条文、国の文書、裁判例や。
法律はこう書いてある。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。(労働契約法 第16条)
国の文書もある。厚生労働省の「雇用指針」は、開業したばかりの企業やグローバル企業向けに、国が裁判例を分析してまとめた文書や。そこに、外資系の会社が実際に争った事例が載っとる。負けた会社と、勝った会社の両方や(出典:厚生労働省「雇用指針」(抜粋))。
| 会社(事件) | 結果 | 会社がしたこと | 分かれ目(ワイの読み) |
|---|---|---|---|
| ゼネラル・セミコンダクター・ジャパン(東京地判 平成15年8月27日) | ✕ 解雇は無効(会社の負け) | 親会社の損失を理由にグループで人員削減。日本法人の売上は横ばいか微増で、剰余金もあった。解雇を避ける努力をしていなかった | 日本法人に減らす理由が無かった |
| クレディ・スイス証券(東京地判 平成23年3月18日) | ✕ 無効 | 事業からの撤退で解雇。解雇の後に、ほかの社員の年俸を引き上げ、退職勧奨の直後に新規採用をした | 避ける努力をしていなかった |
| PwC フィナンシャル・アドバイザリー・サービス(東京地判 平成15年9月25日) | ✕ 無効 | 部門の廃止でマネージャーを解雇。低い評価は採用直後の実務経験の無さによるもので、会社が解雇を考え始めた頃に付いたものだった | 人選の理由が後付けだった |
| CSFB セキュリティーズ・ジャパン・リミテッド(東京高判 平成18年12月26日) | ◯ 解雇は有効(会社の勝ち) | 数年にわたる巨額の損失。組合と3回の団体交渉をして人選の基準と退職パッケージを説明し、他の退職者と比べて比較的良い条件を提案した | 理由・説明・退職金の積み増しが揃っていた |
| シンガポール・デベロップメント銀行(大阪地判 平成12年6月23日) | ◯ 有効 | 支店の廃止。転職支援付きの希望退職パッケージと、割増退職金を提案した | 退職金の積み増しと再就職支援があった |
| チェースマンハッタン(東京地判 平成4年3月27日) | ◯ 有効 | その事業のために採用したゼネラルマネージャーを、事業そのものからの撤退で解雇した | ポストそのものが無くなった |
分かれ目は一つや。本当に減らす理由・避ける努力・公平な人選・説明と協議・積み増した退職金。これを揃えた会社は勝ち、欠いた会社は負けとる。 厚生労働省が整理解雇の判断の要素として挙げる4つ(人員削減の必要性・解雇を避ける努力・人選の合理性・手続きの妥当性)と重なる(出典:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」)。
揃えるのは面倒で、金もかかる。せやから会社は、解雇やなく「キミの合意で辞めてもらう」道を選ぶ。これが、この記事で「キミのほうが強い」と言うときの意味や。無条件に強いんやない。会社の側が、理由と手順を示さなあかん側や。
逆向きも一つ書いておく。同じ指針には、高い処遇の外資が部門の廃止に際して退職金の大幅な積み増しと再就職支援を行って解雇が有効とされた事例や、即戦力として中途採用された営業社員が期待された能力を持たなかった場合に比較的容易に解雇が有効とされる事例もある、と書いてある。外資IT営業は、この層に近い。せやから「何があっても安泰」とは言わん。
それと、解雇をするなら、会社は少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を払わんとあかん(労働基準法 第20条)。
② だから会社は、キミの「合意」で辞めてほしい
雇用指針には、こうも書いてある。「日本においては、解雇に至る前に、退職勧奨が行われることが多い」。
解雇は、理由と手順を示さなあかん。せやけど人は減らしたい。会社に残された道は一つや。キミにお願いして、キミの意思で辞めてもらう。 これを退職勧奨という。
退職勧奨には、解雇のような理由も手続きも要らん。その代わり、キミのサインが要る。 応じるかどうかはキミの自由で、厚生労働省のページにもこう書いてある。「使用者による労働者の自由な意思決定を妨げる退職勧奨は、違法な権利侵害に当たるとされる場合があります」(出典:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」)。
つまり、会社が欲しいものは最初から最後まで一つ。キミの合意や。面談で告げられた「決まったこと」という印象の裏側で、会社はキミのサインを待っとる。
③ 「辞めません」と言われると、会社は困る
ここが芯や。
キミが「辞めません」と言ったら、会社に残る道は、だいたい3つや。
- 解雇に踏み切る。ただし①のとおり、理由と手順を示せんと無効になるおそれがある
- キミを残す
- 条件を上げて、もう一度お願いする
本社にはタイムラインがある。他の国の対象者は決まった日に去る。日本だけ揉めとる状態を、会社は静かに早く終えたい。そうなると、現実に選ばれやすいのは3や。①の表で勝った会社のうち、CSFB は団体交渉を重ねて比較的良い退職パッケージを提案し、シンガポール・デベロップメント銀行は転職支援と割増退職金を提案しとった。それが、条件の動く余地の出どころや。
「辞めません」は、キミが持っとる一番強い札や。 切らんでもええ。持っとるだけで効く。この札を持っとるキミと、持っとることを知らんキミとでは、同じ面談を受けても、着地が違う。
念のため。「必ず条件が上がる」とは言わん。会社によって、キミの立場によって、着地は違う。せやけど、解雇が難しく、辞めてもらうにはキミの合意が要る、という構造は、法律と国の文書で確かめられる事実や。会社が困るのはそのためや、というのがワイの見立てや。
④ 本社の感覚と、日本の差
なんで会社側は強気に見えるのか。本社の国では、それで通るからや。表にすると、こうなる。
| 会社が雇用を終えるのに要るもの | 予告 | |
|---|---|---|
| 日本 | 客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性(労働契約法16条)。会社の都合で減らすなら、さらに上の4つの要素で見られる | 30日前か、30日分の平均賃金(労働基準法20条) |
| 米国 | 大量のレイオフは、60日前の書面の通知(WARN 法)。この法律が求めるのは通知で、レイオフの理由は求めとらん(出典:29 U.S. Code §2102) | 60日(大量レイオフの場合) |
| シンガポール | 雇用契約に書いた予告期間を置くか、その分の給与を払う(出典:Ministry of Manpower “Termination with notice”) | 契約の予告期間(法律の最低は勤続で1日〜4週) |
本社の国の法律が求めるのは、通知や。日本では、理由が要る。本社が強気に見えるのは、上の2行の感覚で来とるからや。会社がやたら強気に見えたら、「日本の力関係を知らんだけ」の可能性がある。ワイの見立てでは、日本人の社員が少ない会社ほど、その可能性が高い。
「売れてないじゃん」と言われたら
外資IT営業なら、身に覚えがあるはずや。商談のサイクルが1年を超える製品で、売上ゼロのまま走る期間は普通にある。それを面談で「売れてない」と言われる。「パフォーマンスのギャップ」という言い方で来ることもある。
法律の筋を、雇用指針の要約の範囲で3つ書く。相対評価で下位にいるというだけでは、解雇の理由にならん。人事考課が下位10%未満でも、相対評価であって絶対評価やないから、直ちに「著しく劣り、向上の見込みがない」とは言えん、とされた事例がある(セガ・エンタープライゼス事件・東京地決平成11年10月15日)。採用直後の低い評価は実務経験がほとんど無かったためで、しかも会社が解雇を検討し始めた頃のものやから、能力が著しく劣るとは言い難い、とされた事例もある(上の表の PwC)。研修も指導もせずに、早くから排除する意図で任意退職を迫った外資系の会社は、負けとる(エース損害保険事件・東京地決平成13年8月10日)。
逆向きも書く。さっき書いたとおり、即戦力として中途採用された営業が期待された能力を持たなかった場合は、比較的容易に解雇が有効とされる事例もある。せやから「数字が無くても大丈夫」とは言わん。
キミがやることは一つ。「売れてない」が、製品の性質なのか、キミの問題なのかを、数字で分けられるようにしておく。 製品の商談サイクル。パイプラインの段階と金額。同じ製品を売っとる他の営業の立ち上がりの期間。自分に与えられた目標と、その期間。達成率、受注、表彰。これを自分の言葉で書き出しておく。会社の言う「ギャップ」の隣に、キミの数字を並べられるかどうかで、話が変わる。PIP を受けるなら、目標と評価の記録を自分でも残す。
「残る」も、キミの正当な選択肢や
ここまで読むと「辞めない」の話ばかりに見えるかもしれんけど、一つ足しておく。条件が合わんなら、残ってええ。それはキミの正当な選択肢や。
ただ、残ると決めた後の立場には、現実の難しさがある。ポジションそのものは無くなると言われとるわけで、配置転換や評価の話が出てくる。残ると決めるなら、その先の進め方は弁護士か社労士と一緒に組んでほしい。この記事の後半は「辞めるなら、良い条件で辞める」ための話や。
会社都合と自己都合 ── 会社が「自己都合」にしたがる理由と、キミに起きること
もう一つ、サインの前に知っておいてほしいことがある。辞め方が「会社都合」か「自己都合」か、や。これは書類の上の言葉の違いに見えて、キミの手取りに直結する。順番に書く。キミに起きること、会社の理由、そして、これをカードにする正攻法。
キミに起きること
退職勧奨に応じて辞めた場合、雇用保険の扱いは自己都合にならん。ハローワークの定める「特定受給資格者」の範囲に「事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者」が入っとる(出典:ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」)。
これで何が変わるか。基本手当(失業給付)をもらえる日数や。たとえば35歳で、雇用保険に入っとった期間(被保険者期間)が7年なら、特定受給資格者は180日、一般の離職者は90日や(出典:ハローワーク「基本手当の所定給付日数」)。それと、自己都合の場合に給付が始まるまで待たされる期間は、2025年4月以降の離職から原則1か月になった(出典:厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(令和7年4月)について」)。
一つ注意がある。同じハローワークのページで、昔から会社に置いてある早期退職優遇の制度に自分から応募して辞めた場合は、この「勧奨を受けた者」に当たらんとされとる。会社が「希望退職を募ります」という形を取ることもある。人員整理のために臨時で募集された希望退職に応じた場合は、離職票(辞めた後に、会社が出して、キミがハローワークへ持っていく書類)の上では退職勧奨と同じ欄に書く(下の「飲まん選択」の段落のリーフレット)。ただし、給付の区分は別や。退職勧奨は「特定受給資格者」やけど、臨時の希望退職に応じた人は「特定理由離職者」になる(出典:上のハローワーク「範囲の概要」)。この場合、待たされる期間は付かんが、給付日数は一般の離職者と同じ表になる。上の例なら、180日やなくて90日や(出典:上のハローワーク「所定給付日数」)。昔からある制度への応募か、人員整理のための臨時の募集かは、募集要綱で確かめて、分からんかったらハローワークに聞いてくれ。
会社が「自己都合」にしたがる理由
会社から「自主退職の形で書面にサインしてほしい」と頼まれることがある。退職願や、「自分の意思で辞めます」という一文が入った書類や。ワイが相談で見た範囲では、外資の退職合意書は最初から「あなたから辞める」形になっとることが多い。
なんで会社はその形にしたがるのか。理由は会社によって違う。ここからは、ワイの見立てや。
- ワイの見立て。 書面が「本人の意思で辞めた」になっとれば、後で争われたときに、それが会社の側の記録になる。逆に「会社から辞めてもらった」と書面に残れば、会社が辞めさせたという事実が、会社自身の書面で残る。会社都合の形は、会社にとって争いの種を書面に残すことに近い
- ワイの見立て。 本社のひな形が、最初から「本人の意思で辞める」形で作られとる。日本の事情を考えて作られとるわけやない
どの理由でも、キミの側の損は同じや。給付日数と、待たされる期間。そして、会社が争いの種を書面に残したくないということは、その形には値段が付く。会社が欲しがっとるものを、キミが持っとる。
だから、どうするか ── 自己都合の形は、売る
入口の姿勢は一つや。「当然、会社都合ですよね」。 事実が退職勧奨なら、それが事実どおりの書き方で、頼むことですらない。そういう顔で席に着く。
それでも会社が自己都合の形にこだわるなら、そこからが取引や。正攻法は、差を分かった上で、自己都合の形を飲む代わりに、条件を上げてもらう。 順番はこうや。
- 差を数字にする。 自分の年齢と被保険者期間で、会社都合なら何日、自己都合なら何日か(上に出したハローワークのページ)。1日あたりの額は、ハローワークで確かめられる。待たされる期間は原則1か月。これがキミの「差」や
- 次の転職の見込みを重ねる。 すぐに次が決まる見込みなら、失業給付はそもそも使わんことが多い。そのときは差の実際の値打ちは小さく、自己都合の形を飲む値打ちは上がる。逆に、次が決まるまで時間がかかりそうなら、差は現実の金や
- 飲むものを、正確に知る。 「自己都合の形を飲む」というのは、合意書の「あなたから辞める」形を受け入れて、離職票で会社都合を主張せん、ということや。離職票-2 には、キミが主張する離職理由を書く欄と、離職者の署名欄があって、国はこの欄を「適正に記載して下さい」と書いとる(下の「飲まん選択」の段落のリーフレット)。事実は退職勧奨やのに、そこへ「自己都合」と書いて署名することになるなら、それは公的な申告の話や。飲む前に、社労士に「この形で、自分は離職票に何を書くことになるか、それで問題は無いか」を確かめてくれ
- 差を上回る条件を頼む。 「自己都合の形で合意する代わりに、退職金を上げてほしい(在籍の終わる日を延ばしてほしい)」。会社が欲しがっとる形を渡すのやから、頼む筋が立つ。本線の交渉(お金か時間か)に、この札を乗せる
- 飲んだら、後で覆さん。 自己都合の形で合意して対価を取った後で、ハローワークに「本当は退職勧奨やった」と異議を述べるのは、会社との約束を破ることになる。取引として飲む。それが嫌なら、飲まん
それと一つ。会社が「助成金の関係で、会社都合にはできない」と言ってきたら、その取引には乗らん。国の雇用関係の助成金の多くには、事業主の都合で社員を辞めさせた会社には支給せん、という要件があって、故意に偽りの記載や証明をして助成金を受けるのは不正受給とされとる(出典:厚生労働省「雇用関係助成金支給要領」)。会社が助成金を使っとるかどうかは、キミの側からは分からん。せやから手順3で社労士に確かめるときに、「この会社の形に応じて、自分が離職票に書くことで問題は無いか」も一緒に聞いてくれ。
飲まん選択もある。次が決まる見込みが無くて給付が要る、あるいは会社が差を埋める条件を出さん。そのときは入口の姿勢に戻って、事実どおり「会社都合(退職勧奨)」で書いてもらうよう改めて求める。会社が応じんまま離職票を「自己都合」で出してきたら、知っておいてほしいのは、離職理由を最後に決めるのは会社やなくてハローワークやということや。会社が書いた理由と、キミが主張する理由の両方を聞いて、それぞれを確かめられる資料で事実を確認した上で判定する、と厚生労働省のリーフレットに書いてある(出典:厚生労働省「離職された方へ -離職票-2の離職理由欄等の記載方法について-」)。離職票の離職理由に納得できんときは、ハローワークで異議を述べて、経緯を説明できる(出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A)。だから、面談のメモ、通知のメール、HR とのやり取りは、全部残しておく。 後で事実を示すのは、その記録や。
ただし、「書面に何が書いてあっても、後で直せる」とは思わんでくれ。資料しだいやし、手間もかかる。飲むなら対価と引き換えに、飲まんなら最初から書面を事実どおりに。中途半端が一番損や。どっちにするか迷ったら、サインの前に専門家に見せてくれ。
会社を敵やと思わんでええ。会社は面倒を避けたいだけで、悪意は無い。せやから、札を持った合理的な相手には、会社も合理的に応える。ここまでが前半の土台や。
最初の1週間でやること

最初の1週間は、決める週やない。確かめる週や。 動揺が収まる週でもある。やることは4つ。
1. サインしない。期限を聞く
面談の場で決めへん。「持ち帰って確認します」で十分や。ワイが相談で見た範囲では、その場でのサインを本気で期待しとる会社は多くない。
聞くのは2つ。回答の期限と、期限を過ぎたらどうなるか。「期限を過ぎたら提示は取り下げです」と言われることもあるが、それも含めて聞いておく。
それと、この段階では「辞めます」とも「合意します」とも言わん。「続けたい気持ちはある」は、伝えてええ。それ以上は、持っとるだけでええ。
2. 書面で確かめる
次に、これは解雇なのか、退職勧奨なのかを書面で確かめる。
届いた退職合意書と、添えられた通知の文言を読む。英語なら resignation(辞職)、mutual separation(合意退職)、termination(解雇)のどれが使われとるか。日本語なら「自己都合」「会社都合」「退職勧奨」のどれか。ワイが相談で見た範囲では、外資の書類は「あなたから辞める」形になっとることが多い。会社から辞めてくれと言われて、その書類が来たなら、それが退職勧奨や。
もし会社が「解雇です」と言うなら、解雇の理由を書いた証明書を請求できる(労働基準法 第22条)。請求されたら、会社は遅滞なく交付せなあかん。これは、相手の立場を書面で固める手や。
3. 情報を集める
交渉は情報戦や。ただ、集める情報は実はそれほど多くない。次のリストで、分かっとることと分かっとらんことを仕分けして、足りないものを取りに行く。
レイオフの理由と範囲
- 理由は何か(市場環境か、組織の再編か、本社の方針か)
- 範囲はどこか(全社か、日本法人だけか、部門だけか)
提示の中身
- 退職金は、給与の何か月分か。その「給与」はベース給か、OTE(基本給+インセンティブの合計)か
- 最終出社日と、在籍が終わる日は同じか、違うか
- ガーデンリーブ(最終出社の後も一定期間、在籍だけ残す形)はあるか
- 残っとる有給はどうなるか(消化か、買い取りか、消えるか)
- コミッションはどうなるか。受注済みで未払いの分、在籍の終わる日の後に計上される案件、クォータの達成の扱い、SPIFF(期間限定のインセンティブ)
- 再就職支援、健康保険、会社の備品の扱いは
- RSU(株式報酬)があるなら、その権利確定日との関係は
回答期限とその後
- 期限はいつか。過ぎたらどうなるか
交渉の窓口
- 条件を決めるのは、日本法人の上層部か、本社や地域の HR か
同じ対象の同僚
- 周りに同じ通知を受けた人がおるか。情報を共有できるか
一つ注意や。退職金が何か月分なら「相場」なのか、ワイはここに数字を書かん。会社によって、在籍年数によって、立場によって、大きく違う。だから、提示された額を相場やと思い込まんこと。 確かめるのは「何か月分か」「何を基準にした月数か」で、それが交渉の材料になる。
それと、有給の買い取りは法律で決まった権利やない。会社に義務は無い。せやけど、交渉の論点としては十分に成り立つ。
4. ここから先は、考え方と設計
ここまでで、キミは札を持って、相手が誰で、何を提示されとるかを把握した。次の節で、札の持ち方と、なぜ合意せんでも困らん側が勝つのか、論点の順番の付け方を書く。それを自分の線(ベスト・ありそう・ワースト・着地点)に落として、HR とのメールに変える設計は、会員向けの節に置いてある。
交渉の考え方 ── 札を持ったまま、席に着く

前半で「なぜキミのほうが強いか」を書いた。ここからは、その強さを条件に変えるための考え方や。
会社が想定しとる、社員の3タイプ
会社は、レイオフを告げた社員の反応を3つに分けて想定しとる。
- 黙って提示を受け入れる社員
- 交渉した上で、最終的に合意する社員
- 合意しない社員
会社にとって一番ありがたいのは1や。2は想定の範囲内で、ワイの見立てでは、たいていの会社は2のために条件を動かす余地を最初から持っとる。そして会社が恐れとるのが3や。前半の③で書いた「辞めません」の札は、ここで効く。
交渉しない理由が、無い ── 合意せんでも困らん側が、勝つ
冷静に考えてほしい。交渉して、通らんかったらどうなるか。多くの場合、最初の条件に戻るだけや。期限を過ぎて提示が取り下げられる可能性は残るから、期限の確認は先に済ませておく(「最初の1週間」の1)。それさえ押さえれば、失うものは小さい。
そもそもキミが「このまま受け入れようかな」と思う理由は、「揉めるのが面倒や」以外にあるか。せやけど、ワイの見立てでは、面倒なのは会社も同じや。それどころか、会社のほうが急いどる。本社にはタイムラインがあって、他の国の対象者は決まった日に去る。キミには、その日は無い。交渉しとる間も、キミはこの会社の社員や。キミが長期戦の構えでおるほど、会社は困る。
交渉で強いのは、声の大きい側やない。合意せんでも困らん側や。 合意せんかった場合に自分に残る道を、多く持っとるほうが勝つ。会社の道は、③で書いたとおり、解雇に踏み切るか、キミを残すか。少ない。せやから会社は、キミの合意が欲しい。キミの道は、残る(正当な選択肢や)。在籍のまま、次の転職を進める(交渉しとる間も給料は出る)。次が決まっとる、あるいは決まりそうなら、それが一番強い。失業給付の見込みもある。これを、頭の中の話やなく、具体的に持っとるかどうか。次の転職の選考が実際に動いとるキミと、何もしとらんキミでは、同じメールを送っても、効きが違う。会社には見えんところで、キミの道が増えとるからや。これが、後半で「次の転職は、交渉と同時に進める」と書く理由でもある。
せやから、会社に「ここがチャンスや」と思わせたらあかん。会社が安心するのは、キミが「早く終わらせたい」と見えた瞬間や。要求を並べた瞬間でもある。そこで会社は、この人は合意する気があって、あとは値段の話や、と読む。
ここで札の使い方を一つ。札は切らんと、持つ。 「辞めません」と突っぱねるんやない。「この会社で続けたいと思っとる」と伝えた上で、「提示の内容については、話を聞かせてほしい」と席に着く。続けたい意向が札で、話を聞く姿勢が席や。これが一番強い立ち位置や。「辞めません」と突っぱねた瞬間に3のタイプに分類されて、会社は構えを変える。続けたい意向を見せながら席に着いとる限り、会社は「この人は残るかもしれん」と3を恐れながら、話のできる2として扱ってくれる。そして、この札が効くのは、キミに別の道があるからや。札は見せるもの、道は持つもの。両方あって、席に着ける。
4つの立ち位置
図にすると、こうなる。縦は「辞めない」という札を持っとるか、知らんか。横は条件交渉をするか、しないか。
- 札を持って、交渉する=合理主義者。 ここを目指す。続けたい意向を伝えた上で、提示の話は聞く、と席に着く
- 札を持って、交渉しない=残留派。 残ると決めた人。正当な選択やけど、その先は専門家と一緒に
- 札を知らずに、交渉する=丸腰の交渉。 「お願い」になってしまう。効きが弱い
- 札を知らずに、交渉しない=即サイン。 会社の想定どおり。一番損をする
ワイが相談で見た範囲では、知らんまま即サインした人が少なくない。この記事を読んだキミは、もう左上に行ける。
論点に、順番をつける
何を交渉するかに順番をつける。全部は通らん。1つか2つに絞る。
- ① お金:退職金の月数と、算定の基準(ベース給か OTE か)。それと、コミッションのうち、在籍の終わる日の後に計上される案件と、クォータの達成の扱い。支給の条件を満たして確定しとる未払いの分は、交渉の材料やない。インセンティブの規程で確かめて、払ってもらうものや(食い違ったら弁護士に)
- ② 時間:在籍の終わる日と、ガーデンリーブ。在籍のまま転職活動ができる期間は、金額と同じくらい価値がある
- ③ 書類:推薦状やリファレンス(次の会社からの評判の照会)の約束。離職理由は頼む項目やない。「当然、会社都合ですよね」の姿勢で臨み、会社が自己都合の形にこだわったときに、前の節のとおり条件に換える札になる
- ④ その他:健康保険の扱い、備品、再就職支援
本線は①か②や。③と④は、本線に添えて頼む。どっちを本線にするかはキミの事情で変わる。次の転職の目途が立っとるなら①、まだなら②、RSU のベスト日が近いなら②、家族のビザが在籍に紐づいとるなら②一択、という具合や。同じレイオフは一つも無い。だから、自分の事情を先に並べてから順番をつける。順番をつけるのは、キミの中でや。最初のメールには書かん。自分の線(ベスト・ありそう・ワースト・着地点)を引いて、会社の返事を見てから出す(会員向けの節)。
ここで、題材になっとる側、つまり HR の視点も書いておく。HR が困るのは、要求を10個並べる相手や。会社の論理は「早く・静かに・公平に」や。それを理解した上で、会社の返事を見てから、頼みを1つか2つに絞って出す相手は、HR にとっても話のできる相手や。この記事を読んだキミが、そういう相手として席に着いてくれたら、HR も読んでよかったと思うはずや。
まだ告げられとらんキミへ ── いまやっておくこと
ここは、まだ告げられとらんキミ向けの節や。すでに告げられたキミは、読み飛ばして次へ行ってええ。
外資ITでは、面談で告げられたその日のうちに、会社のパソコンとメール、社内のシステムが使えなくなることがようある。だから「告げられてから集める」では間に合わんものがある。いま、手元に置いておくべきものは4つや。
- 自分の成果の記録。 達成率、売上の規模、表彰。自分の数字を、自分の言葉で書き出しておく。これは交渉の材料にもなるし、次の転職の CV の材料にもなる
- 会社との書類。 オファーレター、雇用契約書、就業規則、インセンティブの規程、RSU(株式報酬)の付与書類。キミ自身の雇用条件を決めとる書類は、いまのうちに手元で確かめられるようにしておく
- RSU の権利確定日。 次にベスト(権利確定)する日がいつか。在籍の終わる日がその前か後かで、手に入る額が変わる。交渉の論点②の材料や
- 個人の連絡先。 同僚、リクルーター、昔の上司。個人として付き合いのある人とは、個人の連絡先を交換しておく。会社のアドレス帳は、その日に消える
線を一本引いておく。顧客の名前、案件の中身、顧客の連絡先、社内の資料は、写さん。会社の秘密保持の決まりに触れるし、交渉の最中にそれを会社に握られたら、札が逆に効く。どこまでが自分のものかは、就業規則の秘密保持の定めで確かめてくれ。
一つ足しておく。これは「レイオフに備えて、いつも警戒しとけ」という話やない。どれも、外資ITで働く人間が普段から持っとくべきものや。持っとる人は、告げられた日に慌てん。
ここまでで、よくある質問
Q. 回答期限が3日しかない。間に合わんのやけど。
期限は会社が置いた段取りで、法律が決めたものやない。最初のメール(会員向けの節)に「まず気持ちの整理が要る。順番に進めさせてほしい。●日までに返す」と書く。期限の中で足りんなら、そこだけは頼む。延ばしてもらえんかったとしても、期限内に「まだ検討中」と返せば、黙ってサインしたことにはならん。
Q. 自分の成績が悪かったから選ばれたんやろか。
そうとは限らん。成績の良い人が対象になった例もある。レイオフの対象の選び方は、会社の都合(部門・地域・コスト)で決まることが多い。自分を責める時間は短くてええ。
Q. 同じ対象の同僚と、情報交換してもええ?
ええ。提示の中身を見比べることで、「何か月分か」「ガーデンリーブの有無」の相場感が、少なくとも社内については分かる。ただし、交渉の場で他人の数字を出すのは別の話や。それは後半で書く。
ここから先は、ここまでの考え方を、キミの交渉に落とす話や。会社の状況とキミの状況を書き出して、線を引いて、それから HR にメールを書く。1通目から、締めの1通、退職合意書まで。アカデミーの会員向けに置いてある。無料で入れる。ログインすると、この記事の続きが読める。中身はこれや。
- 会社の状況と、キミの状況(合意せんかった場合の道を含む)を1枚に書き出す型
- 4つの線の引き方:ベスト・ありそう・ワースト・妥協できる着地点。会社が「ラッキー」と思う線で出さん。無茶も出さん
- 最初のメールの型(気持ちと貢献→残念→会社の事情は理解したいが、まず気持ちの整理が要る。順番に進めさせてほしい。頼みは書かん)。いつ・誰に・何語で送るか。日本語と英語の目安、AI への頼み方
- 会社の返事の3つの型と、2通目で頼みをどう出すか。締めの1通
- 退職合意書で見る7つの条項と、合意書を AI に読ませるときの伏せ方
- 他社の選考と交渉が同時に進むときの、サイン・内定・入社日の順番
アカデミーの運営元は、外資IT特化の人材エージェント・チャレンジャーベースや。ワイはその学長として書いとる。レイオフの相談には、これまでずいぶん乗ってきた。いま面談の直後で、誰かに話を聞いてほしいなら、困ったら、まずワイに連絡してくれ。うちの運営元のエージェント面談に繋ぐで。
交渉の設計 ── 選択肢を並べて、線を引いて、それからメールを書く
ここからは会員向けや。前半で、なぜキミが強いか、何が札か、なぜ合意せんでも困らん側が勝つか、を書いた。ここでは、それをキミの交渉に落とす。