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【企業研究】Booostとは何者か ── サステナビリティERPを、日本の超大企業に売る日系スタートアップ

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    Department: 企業研究

    学長トミオ

    まいど、学長トミオや。Booost(ブースト)株式会社──この会社を調べに来てくれたんやな、おおきに。あるいは「聞いたことないけど何の会社や?」とたまたま開いてくれたんかもしれん。どっちでもええ、ようこそ。

    結論から言うとくと、Booostは業界の先輩から見ても、なかなか面白い立ち位置におる会社や。サステナビリティの領域で、日本の超大企業を相手に商売しとる日系スタートアップ──と言われてもピンとこんやろうけど、その「どこが面白いんか」を、今日はじっくり解説するで。

    中身は、企業研究担当の黒田と、現場を取材してきた諏訪に任せるわ。ワイは最後にちょっとだけ顔出す。ほな黒田、頼むで。

    \ この記事の検証担当 /

    黒田 Challengers Academy 企業研究担当

    外資ITの現場から経営の近くまでをひと通り経験し、いまは一歩引いて業界全体を見ています。会社を宣伝文句ではなく、構造で読み解くのが役回りです。本シリーズでは、学長トミオの見立てを、事実に照らして確かめていきます。

    黒田です。ここからは、Booostという会社の「面白さ」を、事実に照らして構造で解いていきます。

    先に開示します。本稿で扱うBooost株式会社は、当メディアの運営元チャレンジャーベース株式会社のクライアント企業です。そのうえで、贔屓を抜きにして見ます。賢い読者ほど、宣伝文句より正確な地図を欲しがるはずなので。

    結論から言うと、この会社の面白さは「急成長している」ことそのものではありません。日系のスタートアップが普通は踏み込めない領域に、踏み込んで勝っている──その構造にあります。何が普通と違うのか。まずはそこからです。


    なぜ「日系スタートアップには、これができない」のか

    「大企業に売っているSaaS」なら、日本にもたくさんあります。問題は、その”重さ”と”単価”です。

    日本のSaaSの大半は、ミドルの単価帯で数を取るモデルです。1社あたり年間数百万円、大型でようやく1,000万円を超える、という温度感。これは戦い方として正しいのですが、「全社の根幹を支える激重システムを、一件あたり億単位で、超大企業に売り切る」というエンタープライズセールスとは、種目が違います。

    では、ERP級の激重領域──経営の基幹に関わる、導入に何年もかかる重いシステム──をSaaSで大企業に売れているのは誰か。顔ぶれを見ると、ほぼ決まっています。Oracle、SAPといった外資の巨人。あるいはワークスアプリケーションズ(HUEは2,200社超の大手が導入)や富士通といった、創業数十年の老舗大手。 国内ERP市場は2024年で約1,684億円規模、SaaS比率も伸びていますが、そこにいるのは巨人と老舗ばかりです。

    ここに、新興スタートアップが、ERP級の激重領域で、億単位のACV(年間契約額)を当たり前に取りにいけている──そんな例は、ほぼ存在しません。スタートアップの瞬発力で、巨人と老舗の独壇場だった激重領域に斬り込む。これが、いかに珍しいことか。

    Booostは、その「ほとんどない」に入る、稀な一社です。日系スタートアップが普通は踏み込めない領域で、現に勝っている。では具体的に、何が他と違うのか。「相手」「重さ」「追い風」の3つの軸で見ていきます。


    ① 相手 ── 日本のスーパーエンタープライズの、経営層

    Booostが売っているのは、企業のサステナビリティ情報(CO2排出量、ESG、人的資本などの非財務情報)を丸ごと一元管理する重量級のシステムです。製品名は「booost Sustainability」。同社自身がこれを「サステナビリティERP」と呼んでいる点が象徴的です。会計や人事の基幹システムと同じ”重み”で、これまでバラバラだったサステナビリティ情報を、経営が意思決定に使えるデータとして束ねる。そういう位置づけのシステムです。

    念のため正確に言っておくと、これは会計や人事のような「経営のど真ん中の基幹」そのものではありません。サステナビリティという特定領域のシステムです。ただ後で見るとおり、この領域は今後、経営が避けて通れないアジェンダへと急速に格上げされていきます。

    booost Sustainabilityが一元管理する領域

    ポイントは、これが経理の隅で動く小さなツールではなく、役員や経営層が直接気にかけるテーマを扱うシステムだということ。だから商談相手は現場担当ではなく、役員、CXO。

    導入先を見れば相手の大きさがわかります。株主であり顧客でもある伊藤忠商事では、連結約270社・11万人超が使うサステナビリティ情報の基盤として機能していると報じられています。累計導入実績は95カ国・約6,500社・197,000拠点以上(2025年12月時点)。向き合うのは、日本経済の中枢にいる超大企業の経営層です。

    学長トミオ

    部長に「いい商品ですね」言わせるんと、経営会議で役員に「これないと会社回りまへんで」言わせるんは、鍛えられ方が別次元や。自分が欲しいのは後者やろ。


    ② 重さ ── ERP級の激重を、まだ固まりきってない市場で売る

    外資の確立された製品は、型が完成しています。営業として入っても、勝ち筋はすでに出来上がっていて、仕事は横展開になりがちです。

    Booostは逆です。売っているカテゴリ自体が、まだ世の中に固まりきっていない。サステナビリティ情報を「経営が意思決定に使えるデータとしてSaaSで一元管理する」という売り方は、Excelやコンサルが手作業で回してきた領域に、新しく値段をつけにいく挑戦です。しかも扱うのはERP級の激重システム。型のない激重領域で、勝ち方を自分の手で作る側に回れる。

    製品は、正直とっつきにくい。重くて、説明も難しいシロモノです。でも見方を変えれば、経営層を相手に、この難物を売り切れる営業は、それだけ市場価値が高いということでもあります。製品の難しさは、そのまま営業としての腕の見せどころです。簡単なものを簡単に売って勝っても、力はそれほど伸びません。

    学長トミオ

    完成された型で100点取るより、型のない激重で70点もぎ取るほうが、人間はデカなる。その70点は、一生モンの自慢話や。


    ③ 追い風 ── 市場の拡大を、国の制度が約束している

    成熟市場での横展開がしんどいのは、パイが増えないからです。誰かから奪うゼロサムで、勝っても消耗の手応えしか残らない。

    Booostの市場は、ここが決定的に違います。市場が広がること自体を、国の制度が約束している。

    2025年3月、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が「SSBJ基準」を公表しました。上場企業に、サステナビリティ情報を財務情報並みの水準で開示させる基準です。これが段階的に義務化されます。金融庁の審議会が示したスケジュール案では、プライム市場の企業に、時価総額の大きい順で適用されます。

    • 2027年3月期:時価総額3兆円以上
    • 2028年3月期:1兆円以上3兆円未満
    • 2029年3月期:5,000億円以上1兆円未満
    SSBJ義務化スケジュールとBooostのシェア戦略

    そしてBooostは、この義務化の波が来る順番に沿って、大手上場企業を攻めています。区切りは時価総額3兆円→1兆円→5,000億円。義務化が降りてくる順番とほぼ重なる設計です。実際、同社はこの最上位区分の適用開始(2027年3月期)を「サステナビリティ2026問題」と名づけ、2026年までに大企業が体制を整える必要があると訴えています。

    しかもこれは、机上の目標ではありません。ITRの市場調査(サステナビリティ情報管理ツール市場)によれば、年商5,000億円以上の規模でのベンダー別売上金額シェアは、2024年度22.0%・2025年度予測25.4%。2年連続でNo.1です。一番大きく、一番落としにくいはずの大手上場企業の市場で、すでに首位を取っている。目標を語る会社は多いですが、最上位の市場で現にシェアトップを積み上げている会社は、そう多くありません。

    この戦略に賭けているのが、株主の顔ぶれです。独立系VCのOne Capitalに加え、伊藤忠商事、BIPROGY、パーソル、プロネクサスといった企業が出資に名を連ねています(資金調達はシリーズCまで進み、累計調達額は40億円超)。投資家であり、導入企業であり、販売の協業先でもある──そういう関係を、日本を代表する大手と何重にも結んでいる。スタートアップでありながら、すでに日本経済の中枢に食い込んでいるわけです。

    これが営業の観点で何を意味するか。「市場を作る仕事」をゼロからやらなくていい、ということです。 法律のほうから企業に「対応せよ」と迫ってくれる。だから営業は、需要そのものを生み出す消耗戦ではなく、確実に膨らむ市場で「どう勝ち切るか」という、一番力のつく部分に集中できる。 これは、営業の鍛えられ方として、かなり恵まれた条件です。

    学長トミオ

    追い風が吹くと分かっとる海に、いま船を出せる。漕ぐのは「需要ありまっか?」の説得やのうて「どう勝つか」だけ。こんな地形、滅多にないで。

    ただし──追い風が吹くことと、超大企業の経営層に激重システムを売り切れることは、別問題です。市場が膨らんでも、刈り取れる営業がいなければ意味がない。最前線では実際に何が起きているのか。ここからは現場を取材してきた諏訪に渡します。

    【取材】最前線で何が起きているか ── セールス責任者・中西孝夫氏に聞く

    取材担当の諏訪です。ここからは、Booostの収益部門を率いる中西孝夫氏(CRO/最高収益責任者)に直接うかがった話をお伝えします。会社の構造は黒田が解説したとおりですが、その現場で実際に何が起きているのかは、中の人に聞くのが一番です。

    まず中西氏ご本人のこと。SAP、Oracleという外資ソフトウェアの最前線で20年以上を過ごし、日本で初めてある超大手製造業を世界規模で統括するGlobal Account Directorも務めた方です。外資エンタープライズ営業の「型」を、キャリアで体現してきた人物、と言っていいと思います。そしていまは、Booostで収益全体を背負うCROを務めています。

    その中西氏に、いま起きていることを聞きました。

    最初に伝わってきたのは、大型案件が立て続けに決まっている手応えでした。顧客名は取引上の機微なので控えますが、国内を代表する大手企業クラスと、年間数億円規模・契約期間全体では十数億円規模の包括契約を複数クローズしている局面です。この数億円規模の大型受注自体が同社にとって初めての挑戦で、勝ち方はまだ生まれている途中。ただ、どこを攻めれば決まるかという型は見え始めています。たとえば、これまでサステナビリティ部門にアプローチしていたのを、CXOクラスへと当て先を変えた──そういう試行錯誤の中から、再現性のある勝ち筋が立ち上がりつつある段階です。

    戦略の方向も明確でした。同社はいま、ターゲットを超エンタープライズ(時価総額5,000億円以上の規模)へとシフトさせています。小さなリプレイス案件を数で追うのではなく、経営層が自ら判断するような大型案件にフォーカスして伸びる、という意思です。

    「どんな人と戦いたいですか」と聞くと、中西氏が挙げたのは──コンサル出身で営業に転じ、顧客の課題を構造化してホワイトスペースを埋めにいける人。SMBやミッドマーケットで実績を出してきた人。そして、「超エンタープライズに挑みたい」と志向する若手でした。

    最も熱がこもっていたのが、ここです。趣旨を再現すると──「自分はミッド規模で経験を積んできた。次はエンタープライズ規模の挑戦に進みたい。そして若い人材をブーストして、会社をもっと大きくしたい」。

    完成された組織で整った仕組みを回す話ではない。勝ち方を一緒に作っていく段階の会社だ──取材を通して、その温度が確かに伝わってきました。数字や組織図だけでは見えてこない部分です。

    ここからは、また黒田に戻します。


    外資の「型」を持つ経営陣が、複数いる

    諏訪の取材に出た中西氏の経歴は、この会社を理解するもう一つの鍵です。構造として整理します。

    難しい領域に挑むスタートアップには、よくある落とし穴があります。「野心はあるが、それを導ける経験者がいない」状態です。背伸びした目標を掲げても、型を持つ人がいなければ、現場はただ消耗していく。

    Booostは、ここが手厚い。中西氏はSAP・Oracle出身のCRO。さらにもう一人、岡村崇氏がいます。岡村氏は、世界最大のバーティカルSaaS企業Veevaの日本法人代表を約11年務めた人物です。日本NCR、SAPジャパンを経てVeeva Japan代表に就任し、日本ビジネスを立ち上げ・拡大させた経歴は公開されています。その岡村氏が2024年にBooostのアドバイザーに就き、2026年3月からはChief of Staff 兼 VP of Strategyとして、さらに深く関与しています。

    元SAP/Oracleの中西氏(CRO)、元Veeva日本代表の岡村氏(Chief of Staff 兼 VP of Strategy)。「外資エンタープライズの型」を持つ人材が、経営の中枢に複数いる。 日系スタートアップでこの布陣は、率直に珍しいことです。

    そして営業の観点でいちばん効くのは、その型を持つ人たちが、現場に降りてきているという点です。中西氏はCRO──収益全体を背負う役員です。普通なら数字を管理する側に回りがちな立場ですが、取材の印象では、いまも大型案件の最前線に自ら入り、現場の営業と一緒に伴走している。型を持つ偉い人が遠くから指示を出すのではなく、隣で一緒に攻め方を考えてくれる。これは、成長したい営業にとってかなり大きな環境です。

    つまりBooostは、「まだ型のない難しい領域に挑む」会社でありながら、「その挑戦を導ける外資の型を持つ人が、現場の隣にいる」会社でもある。挑戦の難度と、それを支える伴走者が両方そろっている──この組み合わせが、同社の構造的な強みだと筆者は見ています。


    どんな人に向いているか

    ここまで読んで「面白い会社だな」と感じた方のために、最後に少しだけ、キャリアの観点を添えておきます。営業として、この会社が向いているのはどんな人か。

    近い領域(外資IT、日系SaaS、SMB/Mid営業など)で、すでにしっかり結果を出してきた人。そのうえで、より大きな相手に、より重いものを売る経験を積みたいと考えている人。経営層を相手にしたバリューセリングという、難しいけれど力のつく仕事に関心がある人。そういう人にとっては、腕を伸ばせる環境だと思います。

    逆に、外資IT・SaaSの「1社目」として、いきなりここに飛び込むのは、正直あまりおすすめしません。超大企業向けの重いバリューセリングは、ある程度の土台がある人が活きる場所だからです。裏を返せば、その土台がすでにある人には、強みを伸ばせる場になり得ます。ロールは、経営層に向き合うアカウントエグゼクティブ(AE)が中心です。


    給与レンジ・選考プロセス

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    学長トミオ

    黒田、諏訪、おおきに。どうやった? Booostいう会社、名前は知らんかったかもしれんけど、「日本にもこんな会社があるんやな」と思てもらえたら、今日はそれで十分や。

    もし読んでて「もうちょっと詳しく知りたい」「自分のキャリアと照らして話を聞いてみたい」と思たんやったら、いつでも気軽に声かけてや。ワイらは外資ITや日系SaaSの転職を見てきた立場やから、こういう会社の話も、忖度なしでフラットに一緒に考えられるで。

    学長トミオ

    知らん会社を知るのは、それだけで武器になる。Happy Selling!

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