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Qualtricsのトップに会ってきた ── マーケットを作る、という商売

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    全体公開
    Department: 企業研究
    熊代悟さんに聞く学長トミオ
    Qualtrics日本法人カントリーマネージャー・熊代悟さん(右)に聞く学長トミオ(左)

    黒田さんに、宿題を残されとってん。

    前に黒田さんが企業研究で「Qualtricsとは何者か」を構造で解いてくれたやろ。あの記事は商売の骨格をきれいに説明しとる。せやけどワイの中で、一個だけ引っかかったまま残った問いがあるんや。──何もないところにマーケットを作って、育て続けるて、どういうことなんや? 日本参入から9年目。それでもトップは、効果が出るまでには時間がかかる、て言うてはる。その答えを、この耳で確かめたかったんや。

    先に言うとくで。このChallengers Academyの運営元は、外資IT特化の人材エージェント・チャレンジャーベース株式会社や。ワイはその会社の社長で、このAcademyの学長や。その立場で書いとることは、先に開示しとく。ほんで、これも言うとく。外資は甘ないで。ましてXMなんて「概念を創ってプロダクトを売る」世界や。それでも飛び込む価値があるんか。答えを持っとるのは、この市場を作ってきた張本人しかおらん。せやからワイが直接、日本のトップ・熊代悟さんに会うて聞いてきた。記事は、同行してくれた取材担当の諏訪がまとめてくれとる。

    本記事で扱う企業は、Academy運営元のチャレンジャーベース株式会社が採用支援を行っています。

    諏訪Challengers Academy 取材担当

    はじめまして、取材担当の諏訪と申します。今回は学長のインタビューに同行し、その場で見聞きしたことを記事の形でお届けするのが役回りです。お会いしたのは、「マーケットそのものをつくる」という仕事を9年続けてきた方です。

    取材に伺ったのは、東京駅前・新丸ビル37階にあるQualtricsの東京オフィスです。

    Qualtrics東京オフィス
    Qualtrics東京オフィス(新丸ビル37階)

    席に着く前、諏訪には一つの思い込みがありました。2018年の日本参入から9年目の外資SaaSなら、売り方はとっくに出来上がっているはずだ、というものです。勝ちパターンがあり、プレイブックがあり、営業はそれを再現する──普通の外資ITなら、そうです。

    この思い込みは、その後の1時間で、二度にわたって完全に覆されることになります。

    Qualtricsは何を売っているのか ── アンケートは「あくまでも入り口」

    「XMというのは、どういったものなんでしょうか」学長の最初の質問に、Qualtrics日本法人カントリーマネージャーの熊代悟さんは、一言でこう答えました。人間の「体験」というデータを見える化して、改善し続けて、それで会社を運営していく仕組み──。従業員の体験、お客様の体験、そして市場の体験。この3つの「声」を集めて可視化し、経営判断とアクションにつなげるプラットフォームだといいます。

    顧客満足度調査や従業員アンケートなら受けたことがある、と学長が返すと、熊代さんはそれを引き取りました。「アンケートツールじゃないの、っていう話はあるんですけど」、それは「あくまでも入り口」なのだと。声を集めて、「ふむふむ」と分析して終わりでは、何も良くならない。改善のアクションを起こせる情報まで届けて、初めて意味がある。

    その上で、熊代さんはこの商売の土台にある見立てを語りました。企業とITの歴史は50〜60年以上。その間、企業が見てきたのは財務や売上といった業務データで、「お客さんは何を感じているのか、従業員は何を感じているのか」という感情のデータを業務データと紐づけることは、技術的にも難しかった。その分断を繋ぐのがXMだ、というわけです。

    これは製品の説明というより、経営のやり方そのものの提案です。だから「アンケートと何が違うのか」という問いが、この商売には永遠について回る。──会社の成り立ちや商売の構造は企業研究記事(【企業研究】Qualtricsとは何者か)に譲って、本稿はここから、その「定義されていない商売」を日本でどう立ち上げたのかを追いかけます。

    立ち上げの意外な答え ──「売ることには、そこまで苦労してなかった」

    学長が立ち上げ期に踏み込みました。8年前、立ち上げの頃はどんな感じだったのか。最初期のお客様はどうやって獲得したのか。概念を創って売る商売の初期です。さぞ苦しかったはずだ、と諏訪は答えを待ちました。

    熊代さんは少し考えてから、こう言いました。

    「売ることに苦労したかって、実はそこまで苦労してなかったかな」

    「そうなんですか」と、学長も思わず聞き返しています。隣で諏訪の思い込みが、一つ目の音を立てて崩れました。

    もちろん楽ではなかった、と熊代さんは続けます。苦労は確かにあった。ただ、その在り処が違ったのです。大変だったのは売ること自体ではなく、「アンケートはもうやってんだけど、じゃあ何が違うの」という問いに答え切ることでした。日本企業のほとんどは「お客様第一」を掲げていて、それを否定する人はいない。問題は、では、どう実現するのか。理念と実現手段の間の溝を埋める説明に、一番の労力がかかった。逆に、一度使い始めてもらえれば、理解は早かったそうです。

    その頃を、熊代さんは「20年ぐらい前のような気もするけど、昨日みたいな気もする」と振り返りました。

    それでも時間がかかる理由 ── 売っているのは、働き方の変革

    では、売れるのに、なぜ9年経っても「効果が出るまでに時間がかかる」のか。

    熊代さんの答えは明快でした。「買えばコロッと変わるんだったら、もうどの企業も変わってるよな」──売っているのはツールではないからです。「我々のツールを入れれば解決するものじゃなくて、ツールをベースに働き方を変えていただかないとダメ」で、さらには企業全体のカルチャーも変わる必要がある。集めた声を誰が見て、どの会議で議論し、誰が動くのか。顧客企業がそこまで変わって初めて成果が出る商売なのです。

    それでも、市場の成熟度は「私が始めた8年前から比べると、全然上がってきている」と熊代さんは言います。概念が通じる相手は、9年かけて確実に増えてきた。

    どうやって増やしてきたのか。その答えが、取材で諏訪が一番唸った話でした。

    市場は、顧客と一緒につくる ──「ネットワークの会」の狙い

    熊代さんがチームに徹底して求めてきたことの一つが、「お客さんとのネットワークの会」の開催です。3ヶ月に一度ほど、顧客に集まってもらい、クローズドな場で情報交換をする。

    なぜその会が要るのか。熊代さんの説明が、この商売の急所を突いていました。

    顧客側の担当者にとって、このツールを使うのは初めてです。どうしていいか、本当は分からない。ところが──「企業の中からは、その分野の専門家って見られるわけですよね」

    「社内ではこれ一番知ってるはずだよって思われてるけど、実はそうじゃない」

    その立場の人たちが集まって、悩みや「うちはこうやって苦労した」という経験を共有し合う。「これがありがたいことに非常に好評で」と熊代さんは言います。同社にとっても、顧客がいまどんな状況にあるかを深く知る機会になっている。

    市場創造の歩みを語る熊代さん
    市場創造の歩みを語る熊代さん

    物差しのない市場では、ベンダーが一社で啓蒙し続けるのに限界があります。売り手の語る価値は、聞き手には売り込みに聞こえるからです。しかし買い手同士が自分の言葉で語り合えば、市場に共通言語が育つ。啓蒙の担い手を、売り手から買い手へ広げる──マーケットを作るとは、こういう地道な設計の積み重ねなのだと、諏訪はこの話で腑に落ちました。実際、同社はユーザー交流会を年間11回開催し、延べ350社・679人が参加したと公表しています。

    9年続ける理由 ── おもてなしと「個人対組織」のギャップ

    熊代さんが8年間この仕事を続ける理由も、聞くことができました。日本の「おもてなし」の話です。

    おもてなしとは、いい体験をしてもらうための働きかけ。それはまさにエクスペリエンスマネジメントそのものだ、と熊代さんは言います。人が人に向き合う場面での日本は、世界でもトップクラス。「ちょっと残念なのは、それが個人対組織になった瞬間ですね」

    誰もが覚えのある例が挙がりました。大きな企業に電話をかけたら、「これうちの部署じゃないので」と回される。しかし「顧客体験的には、そんなの関係ないわけですね」顧客にとって、どの部署が答えたかは関係ない。「自分にとって、そのブランド」は一つなのです。一人ひとりは丁寧なのに、組織に入った瞬間にギャップが生まれる。そこを埋める支援ができると信じているから、「いまだにワクワクしてる」──入社した時から変わらず、だそうです。

    「時間がかかる」が、資産に変わる ── AIと「まだまだ序幕」の意味

    時間も残り少なくなり、学長が「このセクションで、あと何を伺っておくべきでしょう」と水を向けると、熊代さんが自分から挙げた話題がありました。「あんまり流行りワードに乗りたくないんですけど」と前置きして──AIです。

    AIは賢いし、人間の頭より速い。それは誰も否定しない。「じゃあ毎回正しい答えをくれるかと言ったら、そうではない」誰でも覚えがあるはずです。「AIに聞いたけど、あれ、ちょっと違うじゃん」という経験。精度を分けるのは、AIに与えるデータと、コンテキスト(背景情報)だと熊代さんは言います。人間なら点と点を繋いで文脈を読める。「コンピューターはやっぱり0、1の世界」だから、それが難しい。

    Qualtricsの強みは、まさにそこにあります。創業から20年以上、人間の感情データのパターンを蓄積し続けてきた。しかも感情は、時代で変わり続けます。熊代さんはコロナを例に挙げました。5年前、コロナ禍の只中で人々が感じていたことと、今の感情はまったく違う。だからこそ、一度きりの調査ではなく、感情のトレンドを継続的に取り続けることに意味がある。

    ここで、冒頭の問いが反転します。概念を創って売る商売は、時間がかかる。しかしその時間は、消費されていたのではありませんでした。市場を耕しながら積み上がった20年分の感情データが、AI時代に入った途端、後から来る者が同じ厚みで積み上げることの難しい資産に変わっていく。時間のかかる商売を続けてきた歳月そのものが、強みに転じるわけです。

    それでも熊代さんは、こう言い添えました。

    「まだまだ、我々も序幕」

    9年やって道半ばのトップが、なぜあんなに楽しそうなのか。答えはこれでした。仕込みが、これから効いてくるのです。なお同社は、公開されている2026年度の日本戦略で、パートナー協業の本格化とマーケットリサーチ領域への注力を掲げています。市場を作る仕事の担い手は、自社から顧客の輪へ、そしてパートナーへと広がっていきます。

    ただし、楽な商売ではない

    最後に、これから飛び込む人のために、難しさの話もそのまま書いておきます。

    熊代さんは、この会社の営業を飾りませんでした。よくあるIT製品は機能で売る。しかしこの商売は「機能じゃないんです」機能は手段にすぎず、使う企業がどう成長するかを「訴求しない限り、売れないんです」提案先も独特で、「我々はIT部にはほとんど行かない」向かうのは人事部や、お客様と接点を持つさまざまな部門。彼らが何に困っていて、どうしたいのかを起点に提案を組み立てる必要がある。熊代さん自身、「ハードルが高く見える」と認めた上で、だからこそ学べる環境だと語りました。

    ちょっとだけ口挟むで。概念を創って売る商売の説明コスト、ワイも古巣で骨身に染みとる。「それ、何に効くんですか」から始まる商談を、何百回やったか分からん。骨が折れるで。せやけどな、この説明コストを払い切った営業だけが手に入る筋力があるんや。それは覚えといてほしい。

    一つ、救いも書き添えておきます。ネットワークの会が象徴するように、市場の共通言語はこの9年で育ってきました。これから入る営業は、完全なゼロから概念を説明した8年前とは違い、先人が耕した畑から始められます。

    取材を終えて
    取材を終えて。学長トミオ(左)と熊代悟さん(右)

    黒田さんの宿題、自分の耳で回収してきたで。時間がかかるんは、この商売が弱いからやない。ツールやのうて、マーケットそのものを作っとるからや。ほんでその時間が、AI時代の資産に化けよる。「まだ序幕」て言い切るトップ、ええやないか。ほんで諏訪、ええ記事にまとめてくれておおきに。

    キミがもし、出来上がった市場で番号を呼ばれるんやのうて、市場を作る側に回りたいんやったら、この会社は選択肢に入るで。自分に合うかどうか、話してみたかったら、ワイに相談してくれ。うちの運営元のエージェント面談に繋ぐで。

    最後に。今回の取材を実現してくれた、Qualtricsの巣山さんはじめ、みなさんにお礼を言わせてほしい。貴重な時間をもろて、ほんまにおおきに。

    Happy Selling!

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