New Relic企業研究|オブザーバビリティの最前線を走る会社を、外資IT営業の視点で解剖する
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学長トミオ
まいど!学長トミオやで。いきなりやけど、「o11y」——これ読めるか?
……読めへんやろ。ワイも最初「オーいちいちワイ?なんやそれ」って思てた。これな、「オリー」って読むねん。o と y の間にアルファベットが11文字あるから o11y。エンジニアの世界では当たり前に飛び交うてる略語で、正体は observability(オブザーバビリティ/可観測性)。今日のテーマや。
今日紹介する New Relic(ニューレリック) は、この o11y の世界で日本でずっと支持されてきた会社や。ただ先に言うとくで。ワイはこの会社を「シェアNo.1やからスゴいやろ」みたいな提灯記事で紹介する気はない。そんなん読んでも、キミが営業として働くイメージは1ミリも湧かんからな。
しかもこの会社、ワイの見立てではちょっと面白い勝ち方をしとる。世界で見たら規模で先を走るライバルがおるのに、日本ではずっとトップを張ってきた。これ、製品の強さ”だけ”やと説明つかへんのよ。……でもこれはワイの直感や。こういう「ほんまにそうなんか?」を、事実で確かめる役がおる。ウチの企業研究担当・黒田さんや。今日はワイのこの見立てを、黒田さんに検証してもろて、会社を構造から解剖してもらうで。
黒田さん、頼んますわ。ほな、しっかり勉強させてもらおな!
\ この記事の検証担当 /
黒田 Challengers Academy 企業研究担当
外資ITの現場から経営の近くまでをひと通り経験し、いまは一歩引いて業界全体を見ています。会社を宣伝文句ではなく、構造で読み解くのが役回りです。本シリーズでは、学長トミオの見立てを、事実に照らして確かめていきます。
筆者は黒田と申します。学長トミオから「New Relic は製品だけではない勝ち方をしている」という見立てを預かりました。これはなかなか鋭い直感だと思います。本稿では、この見立てが事実に照らしてどこまで妥当なのか、どこは留保しておくべきなのかを、会社の構造から順を追って確かめていきます。
まずはトミオが投げたままにした「o11y とは何か」というところから、足場を固めましょう。
そもそも o11y =オブザーバビリティとは何か

難しい言葉ですが、噛み砕けば単純です。o11y とは、システムの「健康診断」です。
皆さんもこういう経験があるはずです。スマートフォンのアプリを開いたら画面が出てこない。購入ボタンを押した瞬間に「エラーが発生しました」と表示される。動画が止まる、決済が通らない——。利用者としては、苛立ってアプリを閉じるだけの話です。しかし、それを提供している企業の側では、裏側で技術者が「どこかで何かが詰まっている。だが、どこなのか」と必死に原因を探しています。
現在のITサービスは、かつてのように一つの大きなコンピューターで動いているわけではありません。小さな部品(マイクロサービス)が数十、数百と連携して動いています。そのうちの一つが転んだだけで、利用者の画面は止まる。そして、その「一つ」を膨大な部品の中から探し当てるのが、非常に困難なのです。
ここで従来の「監視(モニタリング)」と「オブザーバビリティ」の違いが効いてきます。従来の監視は、たとえるなら体温計です。「38度です、異常です」とは教えてくれる。しかし「なぜ熱が出たのか」までは教えてくれません。一方のオブザーバビリティは体温計ではなく、全身をスキャンして「この部位の血流が滞っている、原因はここだ」と原因まで遡れる精密検査にあたります。
業界では、観測するデータを「メトリクス(数値)・ログ(記録)・トレース(処理の足跡)」などと呼び分けます。現時点で覚える必要はありませんが、面接で出てきた際には「健康診断の検査項目の話だ」と捉えておけば十分です。
なぜこれがビジネス上これほど重要なのか。理由は明快で、現在は「サービスが止まること」が「商売が止まること」に直結するからです。 ネット通販、銀行・証券のアプリ、動画配信——いずれもシステムの調子がそのまま売上と信用を左右します。だからこそ企業は、その心臓部を見張るオブザーバビリティに正当な対価を払う。New Relic は、その「見張る仕組み」を企業に提供している会社だと理解してください。
「監視」から「オブザーバビリティ」へ、なぜ言葉が変わったのか
ここで、業界の流れを一段だけ俯瞰しておきます。なぜ近年「監視」ではなく「オブザーバビリティ」という新しい言葉がわざわざ使われるようになったのか、を押さえると、この市場の本質が見えてきます。
かつてシステムが一つの大きなサーバーで動いていた時代は、先述の「体温計」型の監視で事足りました。あらかじめ「ここが異常になったら警告を出す」と決めておけば、たいていの問題は捉えられました。ところが2010年代以降、システムが小さな部品の集合体へと作り変えられ、しかもクラウド上で絶えず形を変えるようになると、「どこが異常になるか」を事前に決めきること自体が不可能になりました。未知の壊れ方をするシステムを、後からでも追跡できる状態にしておく——その必要性から生まれた考え方が「オブザーバビリティ」です。つまりこれは流行り言葉ではなく、システムのつくり方が根本から変わったことに対する、必然的な答えだと捉えるのが妥当です。New Relic は、この変化の早い段階から市場に立ってきた一社です。
AI時代、o11y はむしろ重要性を増す

「AIが何でも自動でこなす時代に、監視のような仕事はいらなくなるのではないか」——そう考える方もいるでしょう。筆者の見方は逆です。
考えてみてください。近年話題の「AIエージェント」は、内部で何を考えどう動いているのか、人間にはますます見えにくくなっています。AIが突然おかしな回答を返す、想定外の挙動をする——その”AIの中身”こそ、いま新たに観測しなければならない対象になりつつあります。先ほどの「画面が止まる」現象が、AIの領域でも起こり始めている、ということです。
New Relic は早い段階からこの領域に投資しており、AIアプリやAIエージェントそのものを観測する機能を打ち出しています。つまりオブザーバビリティは「成熟しきった地味な領域」ではなく、AIが普及するほど観測対象が増えていく、伸びている領域だと整理できます。
これを営業の観点に翻訳すると、意味が見えてきます。扱える商材が、年々増えていく。 「もう提案できるものがない、売り尽くした」という手詰まりが起こりにくい。地味な点ですが、営業として長く働くことを考えると、これは無視できない構造的な利点です。
New Relic とはどういう会社か
それでは、トミオの見立てを検証する前提として、会社の輪郭を押さえておきます。
日本法人の基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | New Relic 株式会社(New Relic, Inc. 日本法人) |
| 設立 | 2018年8月 |
| 本社所在地 | 東京都中央区八重洲2-2-1 東京ミッドタウン八重洲・八重洲セントラルタワー7F |
| 日本事業統括 | 古舘 正清(Group Vice President, Head of New Relic Japan) |
| 事業内容 | オブザーバビリティ(o11y)プラットフォームの提供 |
| 決算月 | 3月 |
| グローバル本社 | 米国・サンフランシスコ(New Relic, Inc.) |
日本法人の設立は2018年。外資ITの中では「老舗の巨人」ではなく、スタートアップに近い気質で一気に成長してきた組織です。少人数で意思決定が速く、一人あたりの裁量が大きい。この体質は、後段の「働く場としてどうか」を考える際の伏線として、頭の片隅に置いておいてください。
グローバル本社の歴史と、非公開化の意味
New Relic, Inc. は2008年、米サンフランシスコで創業された、オブザーバビリティの草分け的存在です。創業者は Lew Cirne。社名 “New Relic” は、創業者名 “Lew Cirne” のアナグラム(綴り替え)になっています。
長く米国市場に上場していましたが、2023年に投資会社(Francisco Partners と TPG)による買収を経て、株式を非公開化(プライベート化)しました。
この事実は、営業を志す立場からはむしろ前向きに読めます。上場企業は四半期ごとの決算数字に追われ、どうしても短期目線に傾きがちです。非公開化によってその短期プレッシャーから一定解放されると、腰を据えた中長期の投資判断がしやすくなると一般に言われます。実際、New Relic は後述する日本市場への大型投資を、この体制下で相次いで打ち出しています。「短期の数字より、中長期で勝ちにいくモードに入った会社」と捉えるのが妥当でしょう。
現在の日本のリーダー:古舘 正清氏
2026年4月、日本事業の統括責任者に 古舘 正清(ふるだて まさきよ)氏が就任しました。
経歴は外資ITの要職を歴任した重厚なものです。日本IBM、日本マイクロソフト、レッドハットを経て、F5ネットワークス、直近ではヴィーム・ソフトウェアの日本法人社長を務めています。「外資テックの日本法人を成長させきる」ことにかけて実績を重ねてきた人物と、業界の長期文脈の中では位置づけられます。
就任にあたり、次のようなコメントを出しています。
「AI時代にビジネスがますますリアルタイム化する中で、オブザーバビリティプラットフォームがビジネス成長そのものを左右する重要なIT基盤となります。(中略)経営に直結する新たなインフラ標準として『AI強化型のビジネスオブザーバビリティ』を確立し、日本企業の競争力向上に貢献してまいります」
ここから読み取れるのは、オブザーバビリティを「IT部門の道具」ではなく「経営に直結するインフラ」として位置づける姿勢です。新しいリーダーが、まさに本稿冒頭の「システム=商売そのもの」という方向に旗を立てている、と見てよいでしょう。
なお、前任として日本法人を率いていたのが小西真一朗氏です。日本にオブザーバビリティという市場をほぼゼロから耕してきた立役者であり、現在の New Relic のポジションは、この時期の土台づくりの上に成り立っています。連続性のある組織だと捉えられます。
New Relic は何を売っているのか

ここからは、営業として「何を売ることになるのか」を、製品の構造から読み解きます。
思想は「すべてを一つの土台に乗せる」
New Relic の製品は、機能の数で言えば非常に多岐にわたります。アプリケーションの監視、サーバーの監視、ログ分析、モバイルアプリの監視、そして前述のAIの監視——挙げればきりがありません。
ただ、営業として押さえるべきは個々の機能名ではなく、その思想です。New Relic の最大の特徴は、「これらをすべて一つのプラットフォーム上に乗せる」という設計思想にあります。
先述の通り、現在のシステムは部品が数百と連携しています。通常はその部品ごとに別々の監視ツールを導入することになり、気づけば監視ツールだけで10種類、という事態も起こります。現場が「監視ツールを監視する」状態に陥るわけです。New Relic は「それらを一つにまとめましょう」と提案する。情報が一画面に集約されれば、障害発生時にどの部品が原因かを横断的に追えます。営業の立場で言えば、点でツールを売るのではなく、顧客の監視のあり方そのものを束ね直す提案ができるということです。
料金は「使った量」で決まる
もう一つ、営業として必ず理解すべきが料金体系です。New Relic は「取り込んだデータ量」と「利用人数」に基づいて課金するモデルを採用しています。毎月100GBまでは無料、ダッシュボードを閲覧するだけのユーザーは無料で追加できます。
これがなぜ営業上効いてくるのか。従来型の「サーバー一台あたりいくら」「この機能は別料金」といった積み上げ式では、顧客は監視範囲を広げるたびに費用が増えるため、導入をためらいがちです。一方、消費量ベースであれば「まず小さく始め、効果を見ながら広げる」という入り方が可能になる。営業としては、初期のハードルを下げて入り込み、顧客内で価値が伝わるほど利用が自然に広がっていく——そうした設計が描けます。
もっとも、「使った分だけ課金」は顧客にとって「使いすぎれば高くつくのでは」という不安にもなります。そこをどう設計し、安心して利用を広げてもらうか。ここに営業と技術担当の腕の見せどころがあります。良い面だけの仕組みではありません。
——この「使いすぎ不安」に対しては、New Relic 自身も手当てを用意しています。一つが「True Up」と呼ばれる仕組みで、想定を超えて使った月でも、その場でいきなり高額な請求が走るわけではありません。一定の猶予期間をおいたうえで、契約金額を上げるか、取り込むデータ量を調整するかを顧客と一緒に見直す——使いすぎを罰しない設計です。
さらに2025年には、従来の「利用人数」で課金するライセンスに加えて、「処理したアクション量」で課金する新しいライセンス(CCU=Compute Capacity Unit)を選べるようにしました(New Relic のプレスリリース)。人数で課金されると、現場のエンジニア全員に行き渡らせるのが難しい。それを量ベースに切り替えられるようにすることで、組織の隅々まで使ってもらいやすくした、という打ち手です。True Up はこの新しいライセンスにも適用されます。
営業の観点で言えば、これは「顧客との関係が、売った瞬間に終わらない」ことを意味します。驚かせて短期で取りにいくのではなく、長く使ってもらって健全に伸ばす——その思想を、料金設計のレベルにまで通している会社だと読めます。
誰が、何のために使うのか
利用企業は実に幅広い。ネット通販、銀行・証券、動画配信、製造業、SaaS——「自社のサービスが正常に動いていることが、そのまま売上と信用に直結する企業」は、すべて顧客候補です。とりわけ一般消費者向けにサービスを提供する企業は、サービス停止が即クレームと解約につながるため、オブザーバビリティに対価を払う動機が強い。導入事例には、誰もが名を知るサービスが並びます(後述します)。
検証:トミオの「製品力だけではない勝ち方」は、本当か
さて、ここからが本稿の核心です。学長トミオが預けてきた見立て——「New Relic は製品の強さだけではない勝ち方をしている」。これを事実に照らして確かめます。
まず、見立ての前提を確かめる
トミオの見立ては、「世界では規模で先行するライバルがいるのに、日本では New Relic がトップを張ってきた」という事実を出発点にしています。
この前提自体は、おおむね妥当です。オブザーバビリティのツールを提供する企業は New Relic だけではなく、よく名が挙がるのが Datadog(データドッグ) です。両社ともこの領域の代表格ですが、会社としての色は異なります。ごく大まかに言えば、Datadog は機能を次々と追加して幅で攻めるタイプ、New Relic は「すべてを一つの土台に乗せ、分かりやすく使えるようにする」ことに思想を寄せるタイプ、と整理できます。
ただし筆者は、ここで「どちらが優れている」という比較には踏み込みません。シェアは測り方——売上ベースか、アカウント数ベースか、どのセグメントを切るか——によって見える景色が大きく変わるためです。確かなのは、New Relic が日本市場で長く支持され、トップクラスの存在であり続けてきたという事実であり、この点においてトミオの前提は成立しています。
妥当な点:強さの源泉は「届け方」にある
その上で、トミオの「製品力だけではない」という見立て。これは妥当だと考えます。
オブザーバビリティの製品は、機能比較表だけを並べれば、各社とも一長一短です。「ここだけが圧倒的に優れている」という決定的な差は、この業界では生まれにくい。にもかかわらず一方が市場で支持され続けるなら、その差は製品スペックの外側——「誰が、どのように価値を届けたか」に求めるのが自然です。
ここで本稿冒頭の「オブザーバビリティは経営の話」という視点が効いてきます。この製品を「IT部門向けの便利な道具」として情報システム部門に説明するだけなら、特別な力量は要りません。差がつくのは、「御社のサービスが停止した場合、いくらの売上が失われ、どれだけの顧客が離れるのか」という問いを経営層に投げかけられるかです。技術の話を経営のアジェンダへ翻訳して届ける。それができれば単価は上がり、容易には他社へ乗り換えられない関係が築けます。New Relic 日本法人は、この「届け方」において強みを発揮してきた組織だと、筆者は見ています。
加えて見落とせないのが、営業を支える周辺機能の厚みです。 New Relic の公式サイトの導入事例ページを一度ご覧いただくと分かります。顧客企業のロゴがずらりと並んでいるのですが、その一つひとつがクリックでき、顧客本人が写真付き・実名で「なぜ選んだか・何が変わったか」を具体的に語る詳細な事例記事に飛びます。 単にロゴを掲載しているのではなく、一社一社について取材した読み物が、これだけの数そろっている。これは簡単に積み上がるものではありません。顧客に事例公開を依頼し、取材し、写真を撮り、記事化する——この地道な活動を継続的に担うのがフィールドマーケティングと呼ばれる機能です。営業が新規顧客に向かう際、「同じ業界のあの企業も、こう使って成果を出している」という具体的な事例を、いつでも携えていける。しかもそれが、顔の見える本人の言葉として残っている。これは営業にとって相当な援護射撃になります。
つまり、「届け方の強い営業」と「それを支えるフィールドマーケティング・事例コンテンツ」が噛み合って回っている。営業が個人の気合いで売っているのではなく、組織として売れる仕組みがある。トミオの「製品力だけではない勝ち方」という見立ては、この構造を指していると理解でき、事実に照らして妥当だと結論できます。
留保すべき点:構造は外から見た推察である
ただし、留保も正直に置いておきます。
ここで述べた「営業組織の強さ」「フィールドマーケティングの厚み」は、あくまで筆者が公開情報から読み解いた構造であり、内部の実態を直接確認したものではありません。 組織の強さは、外形だけでは測りきれない部分が必ずあります。誰がどのように動いているのか、現場の温度感はどうなのか——その一次情報までは、本稿の段階では踏み込めていません。
——もっとも、脱稿後に、この「届け方」の構造を会社側から裏づける情報を得る機会がありました。外形の話に留まらない範囲で、整理しておきます。
まず人の配置です。外資系SaaSの営業組織は、売る人(AE)を厚くし、技術で支える人(SC=ソリューションコンサルタント)は絞る、という構成になりがちです。New Relic 日本法人は、ここが異なります。AE 1人に対して SC をほぼ1人に近い比率で置き、TAM(テクニカルアカウントマネージャー)や TSE(テクニカルサポートエンジニア)といった役割も含めて、導入の入口から、使いこなして成果が出るところまで伴走する体制を組んでいるとのことです。技術支援の層が、外資SaaSの中では際立って厚い、ということです。
これは場当たり的な体制ではなく、日本法人の立ち上げ期から続く一貫した方針だと聞きます。まず直販を重視し、サポートを手厚くする——当時の日本ではまだ耳慣れなかったオブザーバビリティを根付かせるために、製品を渡して終わりにせず、使えるようになるまで付き合う。その積み重ねが、導入理由・乗り換え理由として顧客に評価され、前述の事例コンテンツにも残っている、という構図です。先に触れた前任体制からの土台づくりとも、地続きの話だと整理できます。
これにより、外から読み解いた「届け方の強さ」という構造は、会社側の説明によって相当程度まで裏づけられたと考えます。ただし、それでもなお外形・体制レベルの情報であることに変わりはなく、現場の温度感——実際に人がどう動き、どんな手応えで仕事をしているか——は、やはり直接確かめたい。その意味で、次の取材の意義はむしろ増したと言えます。
この点については、学長トミオが近く New Relic を直接訪ね、新リーダーの古舘氏や営業の現場に話を聞いてくる予定です。外から読み解いた「構造」が、内側から見た「実態」とどう重なるのか。 その取材の模様は、改めて別記事(実態編)としてお届けする予定です。本稿はその前段にあたる「構造編」と捉えていただければと思います。
2026年、New Relic の3つの転換点

トミオの見立ての検証はここまでです。最後に、なぜ「いま」この会社がこれほど動いているのか——2026年の動きを3点に整理します。営業として入るなら、この追い風は知っておくべきです。
第一に、PE傘下での中長期投資モードです。前述の非公開化により、短期の決算に縛られずに腰を据えた投資ができる状態にあります。以下の二つの打ち手は、その表れと読めます。
第二に、日本データセンターの開設です。これにより、データを国外に出せない規制を持つ業界——金融、通信、公共など——への展開がしやすくなります。「止まることが許されないシステム」を持つこれらの業界は、オブザーバビリティの有力な顧客層であり、ここが解禁される意味は大きい。営業の観点では、攻められる市場そのものが広がる動きです。
第三に、AI×オブザーバビリティです。先述の通り、AIアプリやAIエージェントの観測という新しい領域に投資を進めています。観測対象が広がることは、すなわち提案できる範囲が広がること。伸びる領域に商材を持っている、という事実は、営業にとって追い風です。
この3点を一つの言葉でまとめるなら、「日本市場で確実に勝ちきるための、本気の投資フェーズに入った」——そう表現できる状況です。
営業組織とロール

外資ITの営業組織は役割が細かく分かれます。自分がどのロールで入り、どうキャリアを伸ばせるのかを地図にしておきます。
AE(アカウントエグゼクティブ) は商談をリードして契約を獲得する中心的なロールです。New Relic では担当顧客の規模で階層が分かれ、超大手を担当する層から成長企業を担当する層まであります。大手担当ほど一件あたりのインパクトが大きく、商談は長く複雑になります。
SDR(セールス・ディベロップメント・レップ) は、AEが商談に集中できるよう、その手前で見込み客を見つけ最初の接点をつくるロールです。単なるアポイント獲得係と見られがちですが、New Relic の場合は事情が異なります。顧客の多くはオブザーバビリティ自体が初めてであり、SDRが最初に「なぜこれが必要か」を腹落ちさせ、商談の質そのものを引き上げる必要がある。会社全体の商談パイプラインの入口をつくる、戦略的に重要なポジションです。
このSDRチームについては、New Relic 日本法人は特にプロフェッショナル意識が高いと評されます。その現場の実態は、前述の訪問取材後に追記したいと考えています。専門性を持って商談の入口を設計したい人にとって、注目すべきロールです。
SE / SC(ソリューションエンジニア/コンサルタント) は、AEと組んで技術面から顧客を支えるロールです。オブザーバビリティは技術製品ですから、「実際にどう動くか」「自社環境で使えるか」を示す担当が要ります。AEが「なぜ買うべきか(ビジネス)」を語り、SEが「どう実現するか(技術)」を見せる。この二人三脚が外資IT営業の基本フォーメーションです。
CSM(カスタマーサクセスマネージャー) は、契約後に顧客が New Relic を使いこなし成果を出せているかを伴走するロールです。消費量ベースの料金モデルでは、顧客が使うほど価値も売上も伸びるため、「売る」だけでなく「使い続けてもらい、広げてもらう」ことが収益に直結します。
Partner Sales(パートナーセールス) は、SIerやクラウド事業者などの販売パートナーと組んで拡販を設計するロールです。
キャリアの入り方について、一つ実態を押さえておきます。この会社では、AE(アカウントエグゼクティブ)として入社する人が最も多い。 つまり、最初から契約を獲る中心ロールを担う形で入るのが、ここでの本命ルートです。「まずSDRから始めて、いずれAEへ」という段階的な道を標準と考えるのは、この会社に関しては実態と合いません。即戦力として営業の中心を任される前提で考えるのが自然です。
その上で、道は一つではありません。SDRとして入り、そこから成果を出してAEへ進む人もいます。逆にSDRという領域そのもので専門性を深め、リーダーとしてチームを率いていく人もいます。AEとして入った後も、より大きな顧客を担当する方向、マネジメントに進む方向、技術寄りに専門化する方向と、複数の道が開けています。「決まったはしごを一段ずつ登る」のではなく、自分の強みに応じて進む方向を選べる——これが外資IT営業のキャリアの実像です。なお、SDRは「未経験者がとりあえず入る入口」ではなく、顧客の課題を引き出し商談の質を左右する以上、一定の専門性を持った人材が担うロールである点も補足しておきます。スタートアップ気質で裁量の大きい New Relic では、実力が伸びれば早く任される環境だと見られます。
給与・待遇
具体的な金額は個社ごとに異なり、筆者が断言できる領域ではないため、外資IT営業の一般的な相場観として触れるに留めます。
外資ITの営業は、「基本給(ベース)+成果報酬(インセンティブ)」の二階建てが基本です。この合計の想定額を OTE(インセンティブ込みの想定年収) と呼びます。目標を達成すれば、ベースと同等かそれ以上のインセンティブが乗る設計が一般的です。すなわち成果が年収に直結する。日系企業の年功的な昇給とは構造が異なります。OpenWork等の口コミを見ても、New Relic を含む外資IT営業職は国内平均と比べて高い年収レンジが並びます。ただし達成へのプレッシャーも相応にあり、リターンとシビアさはセットだと理解しておくべきです。
具体的な金額レンジや評価制度の中身は、選考過程やエージェント経由で確認するのが確実です。気になる方は、末尾の「次のステップ」で相談に乗ります。
オフィス環境
New Relic 日本法人は、2025年5月に東京ミッドタウン八重洲(八重洲セントラルタワー7F)へオフィスを移転しています。東京駅直結の好立地で、外資ITらしい開放的な空間です。スタートアップ気質の組織らしく、部署の垣根が低く、職種を越えて連携する文化があります。これは、検証の章で述べた「営業×フィールドマーケティングの連携」が回る土壌でもあります。
導入事例 ──「名前を知っている会社」が並ぶ
検証の章でも触れた通り、New Relic の導入事例は分厚い。営業として「どんな企業に、どう刺さるのか」をイメージするために、業種の観点で整理します。
メディア・動画配信系は、自社サービスの安定稼働が視聴者体験と信用に直結する業種で、停止が即クレームにつながるためニーズが強い。金融・証券系は、止まることが許されないシステムの代表格で、前述の日本データセンター開設によりさらに動きやすくなります。小売・EC系は、セール時のアクセス急増にシステムが耐えられるかが売上を左右します。SaaS・スタートアップ系は、自社プロダクトの品質がビジネスそのものであり、エンジニア組織全体で活用する事例が多い。
要点は、業種を問わず「システムがビジネスの根幹にある企業」すべてが顧客になりうるということです。営業として特定業界に閉じず幅広く提案できる——これは扱う商材としての懐の深さです。
具体的な社名と導入ストーリーは、New Relic 公式サイトの導入事例ページで確認できます。並んでいるロゴはどれもクリックでき、その先には顧客本人が語る詳細な事例記事が待っています。面接を受けるなら、関心のある業界の事例を2〜3本読み込んでおくだけで、解像度は大きく上がります。「この会社は、自社の事例をこれだけ丁寧に語ってもらえる関係を顧客と築いている」——その事実を体感する意味でも、一度目を通しておくことをおすすめします。
こんなチャレンジャーに向いている
最後に、どういう人がこの環境で活きるかを整理します。「向いていない人」を断ずるのではなく、「こういうタイプが伸びる」という観点です。
技術の話を相手のビジネスの言葉に翻訳できる(したい)人。 オブザーバビリティはIT製品ですが、刺さるのは「経営の話」に翻訳できたときです。技術そのものより「それが顧客の商売にどう効くか」を語ることに面白さを感じる人は、中心で活きます。
正解のない中で自分で動ける人。 スタートアップ気質で裁量が大きい分、手取り足取りの指導は少なめです。自ら考えて取りにいくことを好む人に向きます。
学び続けることを楽しめる人。 扱う領域(AI監視など)が年々広がります。「売れる商材が増える」ことは、裏を返せば「学び続ける必要がある」ことでもあります。
成果で評価されたい人。 成果が年収に直結するシビアな世界です。年功より実力で評価されたい人にはフェアな環境です。
逆にミスマッチになりやすいのは、「仕組みが完全に整い、指示通りに動けば評価される環境が良い」というタイプでしょう。それが悪いのではなく、合う・合わないの問題です。外資ITのスタートアップ気質は、良くも悪くも「自分で取りにいく」場ですから。
学長トミオ
黒田さん、おおきに。ワイの「製品だけやない勝ち方しとる」っていう直感、ちゃんと事実で裏づけてくれたな。しかも「これは外から見た構造で、中の実態はまだ確かめきれてへん」って留保まで正直に置いてくれた。これやで、これ。ワイが熱量で勧めて、黒田さんが冷静に検証する——この二人三脚やからこそ、キミに安心して読んでもらえる記事になるんや。
そんで、その「留保」の部分や。ワイ、近々この New Relic にお邪魔してくる。新リーダーの古舘さんに新体制の狙いを聞いて、営業やSDRチームの現場の温度感も取材してくるで。黒田さんが外から読み解いた「構造」が、中から見た「実態」とどう重なるんか——そこを生の声で確かめて、別記事で続編として届けるで。楽しみにしといてな。
o11y、最初は「なんやそれ」やったやろ? でも読み終わったいま、「システムを見張ることが、商売を守ることなんや」ってちょっと腹落ちしてへんか。その感覚を持って外資IT営業のサバンナに出たら、キミはもう一歩リードしとるで。
そうそう、「ほんで自分の場合はどうなんや?」が気になったら、このすぐ下の【相談してみる】から気軽に声かけてや。次の一歩、ワイらが一緒に作戦立てるで。
Happy Selling! ── 学長トミオ
