Qualtricsのトップに、キャリアの作り方を聞いてきた ── スキルを貯める、という生き方
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学長のトミオや。キミ、「キャリアの正解」って、いつ決めなあかんもんやと思う?
20代のうちに目標を固めて、逆算して、一直線に登っていく──そんなキャリア論は耳にタコができるほど聞いてきたやろ。せやけど、今回ワイが会うて話を聞いてきた人は、真逆のことを言うんや。新卒はホテルのフロント。そこから人材紹介、そして外資IT。今はQualtrics日本法人のカントリーマネージャーや。狙うてその席に座った人やない。
先に二つ、言うとくで。ひとつ。このChallengers Academyの運営元は、外資IT特化の人材エージェント・チャレンジャーベース株式会社や。ワイはその会社の社長で、このAcademyの学長や。今回の取材も、その縁で実現したもんや。ふたつ。この経歴を、そのまま真似しようとしたらあかん。盗むべきは道順やのうて、考え方や。話の中身は、取材に同行してくれた諏訪さんがまとめてくれとる。ほな、頼むで。
諏訪Challengers Academy 取材担当
はじめまして、取材担当の諏訪と申します。今回は学長のインタビューに同行し、その場で伺ったお話を記事の形でお届けするのが役回りです。テーマは、外資ITのトップを務める方の「キャリアの作り方」。ご本人の言葉を中心にお伝えします。
今回お話を伺ったのは、Qualtrics日本法人でカントリーマネージャーを務める熊代悟さんです。Qualtricsがどんな会社かは企業研究記事(下記リンク)で扱いましたが、今回のテーマは会社ではありません。熊代さんという一人の職業人が、どんなふうにキャリアを作ってきたのか。東京駅前・新丸ビル37階のQualtrics東京オフィスで、学長がじっくり聞きました。
なぜキャリアの話なのか。経歴が、あまりに異色だからです。
ホテルのフロントから、すべては始まった
熊代さんが新卒で入ったのは、恵比寿にある外資系ホテル。フロントに立つホテルマンでした。そこから人材紹介会社の日本法人立ち上げに携わり、その後にIT業界へ。IT業界でも、最初はインサイドセールスからのスタート。自ら商談を持つフィールドの営業になったのは、その後だったと言います。

しかも意外なことに、当初はマーケティングをやろうと考えていて、営業も、営業マネジャーも、目指していたわけではなかったそうです。それが今では、外資ITソフトウェア企業の日本のトップ。キャリアの一貫性を探すほうが難しい道のりです。
けれど取材を通じて見えてきたのは、この一見バラバラな道のりを貫く、一本のはっきりした考え方でした。
「絶対こうなりたい」を、持たなくていい
熊代さんは、自社に応募してくる人、特に若い人に「将来どういうふうになりたいですか」と聞くそうです。多くの人が「こうなりたい」を答える。ただ、熊代さん自身の考えは少し違います。
「絶対こうなりたい、というのを明確に持てる方はいいと思うんです。ただ、やっぱり世の中が変わっていく」
例に挙がったのはコロナ禍でした。仕事に対する考え方、キャリアに対する考え方が、あの数年で変わった人はいくらでもいる。自分が何をしたいかは、時代とともに変わっていくものだ、と熊代さんは言います。
「変わっていったときに、それができるためのスキルを貯めていく。それがキャリアの成り立ちかなと思います」
目標を固定するのではなく、変化が来たときに乗れる力を貯めておく。熊代さんはこれを「ベーススキル」と呼んでいました。
「今はこれだけ多様化してきているので、チャンスはいくらでもあるんです。そのときに、自分がやりたいものに乗れるかどうかというベーススキルを作る。若い方は、それをやればいいんじゃないかなと僕は思います」
印象的だったのは、この「ベーススキル」の中身を、営業スキルに限定していなかったことです。なりたいものが見えたとき、そこに至るために何をすればいいかを考える。それは営業かもしれないし、別の何かかもしれない。「営業だけが全てだとは思っていない」と、外資ITで営業組織を率いるトップが言い切るのです。実際、今の立場にはホテル時代に学んだことも生きている、と熊代さんは言います。貯めたものは、職種や業界の壁を越えて効いてくる、ということなのでしょう。
さらに驚いたのは、この姿勢が現在進行形だったことです。日本のトップという立場にありながら、熊代さんは今でも「こういうのって面白いな、これをやったらどうなのかな」と考えることがあると言います。転職を考えているわけではなく、面白いものを見つけたら、自分にそれをちゃんとできる能力があるのかを問う。スキルを貯めるという営みに、上がりはないようです。
実際、熊代さんは自身のキャリアを「変化というものを選び続けてきた」と振り返ります。ホテルから人材紹介へ、人材紹介からITへ。転機のたびに、貯めてきたスキルで次の変化に乗ってきた、というわけです。
狙ってなったわけではない ── 日本代表への道
では、カントリーマネージャーという役職には、どうやって辿り着いたのか。学長がここで、率直に「どうやったらカントリーマネージャーになれるんですか」と切り込みました。
返ってきた答えは、拍子抜けするほど正直なものでした。
「なりたい、なりたいと思ってなったわけじゃないんです。自分がやろうと思うことを、必死にやっていた」
なりたくなかった、という意味ではありません。役職を目標に置いて逆算したのではない、ということです。熊代さんは前職のデジタルマーケティング系企業に12年間在籍しています。入社からの2年間は営業。そして3年目、突然カントリーマネージャーに就任します。本人も狙っていたわけではなく、「突然それを言われた」と話しています。
ただ、抜擢には思い当たる理由がありました。熊代さんは米国の大学に留学した経歴があり、英語でのコミュニケーションに壁がありません。そして何より、日本人が海外のメンバーに対してシャイに見える振る舞いをするのが嫌いだったと言います。ポジションに関係なく、営業として自分に必要なものを本社にガンガン交渉していた。その姿勢が見られていたのだろう、と自己分析していました。そんなある日、本社側から降ってきたのが、この一言だったといいます。
「じゃあ、お前日本やれよ」

日本法人のトップを、お前がやれ──そういう意味です。入社3年目の営業への、突然の抜擢でした。狙って掴んだ椅子ではなく、目の前の仕事に必死だった人間に、変化のほうがやってきた──熊代さんのキャリア哲学を、そのまま体現したような転機です。なお、現職のQualtricsには、最初からカントリーマネージャーとして面接を受けて入社したそうです。
ただし、究極は「数字」
ここまで読むと、「目の前のことを頑張っていれば、いつか報われる」という柔らかい話に聞こえるかもしれません。ですが、ここは、はっきりお伝えしておきたい点です。熊代さんの話の土台には、営業としてのシビアな現実認識が敷かれています。
カントリーマネージャーになる条件を問われた熊代さんは、わからない、と前置きしました。狙ってなったわけではない以上、再現可能な手順は語れない、という誠実さだと思います。それでも挙げてくれた要素は具体的でした。営業として数字を見続けること。海外のメンバーに対して、ニーズをきちんと話せること、要望を言えること、そして言われたことを聞けること。外資の日本法人で上に立つ人間には、本社と対等に渡り合う双方向のコミュニケーションが求められる、ということです。そして最後に、こう断言しています。
「究極、営業で言えば、やっぱり数字ですね」
変化に乗る、スキルを貯める──その柔らかい言葉の足元には、まず目の前の数字を達成するという逃げ場のない前提がある。実力に対してフェアな外資の営業の世界は、裏を返せば、結果と向き合い続けるしかない世界でもある。熊代さんの断言は、その現実を踏まえたものに聞こえました。「必死にやっていた」の中身は、数字をやり切ることだった。ここを抜きに、この人のキャリア論は成立しないのだと感じました。
積み重ねは、裏切らない
では、目標を固定しないのだとしたら、日々何を指針にすればいいのでしょうか。熊代さんの答えはシンプルでした。これになりたいと思ったときに、そうなるためには何をすればいいのかを考え、そのギャップを埋めていく。目標は変わってもいい。ただ、そのときどきの「なりたい」と現在地の距離を測り、埋める作業だけは止めない、ということです。
そして取材の終盤、熊代さんの口から出てきたのは「積み重ね」という言葉でした。
「実は、ホテル時代に学んだことも今に生きているんです。キャリアが変わると全部リセット、ということじゃなくて、本当に積み重ねだと思うので」

そして、この記事の読者層である20代・30代へ、こんな言葉を残してくれました。
「今、社会人一年生とかで頑張っているかもしれないですけど、その経験って絶対に後に生きると思うんですよね。それを持って日々頑張っていくのが、一つの成功の道じゃないかなと僕は思います」
キャリアに迷いがある。目標がまだ定まらない。この記事を読んでいる方の中にも、そういう時期の真っ只中にいる方は多いと思います。ただ、熊代さんの話を伺って、目標が定まらない期間は止まっている期間ではなく、貯める期間なのだと諏訪は受け取りました。そして、いま目の前にある仕事こそが、その「貯め」の材料になるのだと思います。
新卒一年目、ホテルのフロントに立っていた熊代さんは、20数年を経て、外資ITの日本代表になりました。そして、あの頃の経験が今に生きていると、その本人が断言しています。この事実は、キャリアの入口で迷っている人にとって、何よりの答えになるのではないでしょうか。
諏訪さん、おおきに。ええ話やったな。
「スキルを貯める」いうんは、地味な言葉や。せやけどキミ、これ、キャリアに迷うてる人間への一番実践的な答えやとワイは思うで。なりたいものが決まらんでも、今日の仕事で貯められるもんはある。決まってへんことを言い訳に、貯めることまでサボったらあかん。それだけの話や。
最後に。取材の場を作ってくださったQualtricsの皆さん、窓口として支えてくださった巣山さん、そして貴重なお話を聞かせてくださった熊代さん、ほんまにおおきに。
Happy Selling!
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Qualtricsがどんな会社かは、こちらの企業研究で扱っています。
